【YouTuber】人狼ゲーム 4

2-8 ページ30

.



「中学、高校はずっと演劇部。 でも部長とかじゃなくて、脇役ばっかりだけど。 ……お話が好きだったの、昔から。例えばね────」

私たちは色々な話をした。 自分のことを語って、陸くんのことを知って。 夢のような時間だった。

話が一段落つくと、陸くんが言う。

「これから先もずっとバカやってんだろうなーって、思ってたのに」

彼は私から目線を外した。 遠くを見つめる陸くんの横顔が、どこか切ない色に染まる。

「……さすがにまだ早いよ。 まだ、終われない」

「そうだね……」

(大丈夫。 私が助ける)

まだ終わらせない。 本物の愛で、彼を幸せにしてあげたい。

不意に、記憶の中の光景が蘇った。 美希さんと並んで歩いている彼。 美希さんの肩に手を添え、心配そうに話しかけている彼。

考え過ぎだ、別に特別な意味なんてない、とは思うけど。 心の片隅に“彼は優しいから、そこに付け込まれてるんじゃないか”、“たぶらかされそうになってるんじゃないか”という不安が湧いてきてしまう。

「陸くん、美希さんと仲良いの？」

一瞬、言葉が喉の奥に引っかかってしまったが、頑張って押し出した。

「別に普通だよ？」

彼は首を傾げて事も無げに答えた。

「そうなんだ」

「確か中学のとき運動部だったって言ってた。 あと今は、モデルとかもやってるんだって」

自分から訊いたくせに、、美希さんのことを語る彼を見ると何だか複雑な気分に陥る。

「あぁ、確かに。そんな感じする」

苦く笑いながら言うと陸くんは対照的な笑みを浮かべた。

「ちょっとだけ、俺と似てる」

その言葉にふと顔を上げる。 先ほどとは異なり、彼の横顔は太陽に照らされて眩しかった。

「自分の好きなことに全力で打ち込んで楽しんでる、みたいな」

心底羨ましかった。 陸くんに語られる美希さんが。 この場にいなくても、彼を笑顔に出来る彼女が。

気づくと拳を握り締めていて、中指と薬指の爪が掌に深く食い込んでいた。 ちょっと、痛い。



.

2-9→←2-7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す