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朝は訪れた。 やっぱり私は死ななかった。
皆、はじめくんの部屋に集まっていた。 彼は床に横たわって動かなくなっていた。 顔がぐちゃぐちゃに潰れていた。 シチューみたい、と思った。 大きくてまん丸いフランスパンの上を切って、中身をくり抜いて、そこにビーフシチューをたっぷり満たしたやつ。
正直、私は凄くほっとしていた。 陸くんは襲われなかったわけだ。 彼が無事ならそれでいい。
爽やかな朝の訪れとは程遠く、この場には重たい空気が漂っていた。
「……っう」
そらが口元を抑えて部屋を飛び出していった。
「そら……」
私は後を追いかけたものの、途中で立ち止まる。 彼は真っ青な顔だった。 トイレへ向かったのだと思う。 ……無理もない。 私も初めて死体を見たときは、危うく胃の中身を戻しかけた。 その夜はなかなか寝つけず、眠ったら眠ったでひどい悪夢を見た。
それでも不思議なことに慣れてしまう。 慣れるって、一番怖いかもしれない。
*
食堂に皆集まって、テーブルの辺りに固まっていた。 中には陸くんの姿もあった。 彼は美希さんの背に手を添え、心配そうに「大丈夫……?」なんて声を掛けている。
そんな光景を目にした途端、かっと顔が熱くなった。 頭に血が上った。 信じられない。 何であんなことするんだろう。
きっと美希さんが余計な台詞を吐いたに違いない。 陸くんが世話を焼かざるを得なくなるような言葉を。 私は唖然としたまま2人を眺める他なかった。
「分かった!!」
突如、そんな大きな声が聞こえてきて、皆が一斉にそちらを向いた。 ツリメくんが飛び跳ねるように駆けてくるところだった。
皆のいるテーブルまで来ると、その勢いのまま、バン!と手をつく。
「俺、凄いことに気付いた!!」
目がぎらついている。 かなり興奮しているみたいだ。 どうやらはじめくんの亡骸を見たから、というだけじゃなさそう。 いても立ってもいられない様子だ。
「俺は預言者。 昨日の夜、占いをした。 その結果を今から発表するよ!」
「待った。 発表するなら3人同時がいい」
シルクくんが静かに言う。
3人、という言葉を聞いて初めて思い出した。 はじめくんも預言者を名乗っていたんだった。 人狼は賭けたようだ。 あえて、用心棒に守られているかもしれない自称預言者を襲撃した。
「3人とも、昨日の夜に1人を占ったはず。 その結果を一斉に言って欲しい」
「何で一斉なの?」
シルクくんの言葉にリクヲくんが小首を傾げる。
「そうすれば他人の結果を聞いてから発表を変えたり出来ないじゃん。 反対の奴は?」
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時