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─Wolf Side─
深夜の厨房に一つの人影が揺れる。 当てつけのように大きな音を立てながら棚の中を漁る。
彼は────エイジは、怒っていた。 誘拐されたことにも、無理矢理こんなゲームを強いられていることにも、それが一度で終わらなかったことにも。
「……!」
ふと、動きを止める。 引き出しの中に目的のものを見つけた。 サバイバルナイフだ。 ひとまず凶器にはありつけた。 彼は満足げに数度頷く。
ちら、と時計を見るととっくに12時を過ぎていた。 それなのに、ここには彼一人しかいなかった。 そんな事実がまた、彼の怒りを煽る。
「くそ……。何やってんだよ」
苛立ちながらも仲間を待つ他なかった。 一人で襲撃に向かうなどとても現実的ではない。 程なくして、背後から足音が聞こえ、エイジは振り返る。
「マホトか……」
姿を現れたのはマホトだった。 彼は悠然としている。
「……何だ、エイジじゃん」
「おせーよ。ちゃんと時間通り来いよ」
マホトはヘラッと笑って「ごめんごめん」とさして悪びれることなく謝る。
「もう一人は?」
「さぁ?」
「人狼は3人の筈だろ」
「俺に訊かれてもさぁ」
何処か飄々としていて掴み所がない彼にエイジの苛立ちは募っていくが、何とか抑え込むとため息をついた。
「おお、すげぇ。 これで殺すんだ?」
マホトはそんなエイジなどお構い無しに、彼が持つサバイバルナイフを取り上げた。 目の前にかざし、しげしげと眺める。
「……じゃあ、あいつが人狼だったのか?」
エイジは呟くように言った。 あいつ、とは投票で処刑されたンダホのことだ。
「まぁ可能性はあるけど、そんな高くないと思うよ」
マホトは薄く笑いながら言う。
「何で?」
「自称預言者が4人も出てる。 一人は俺、本物と狐が一人ずついるとして……もう一人が人狼っていうのは、割とありそうな話じゃん?」
ナイフの切っ先をエイジに向け、向かい合った。
「なら何で来ないんだよ」
「んー……、寝坊したのかも」
「寝坊!?」
「そう。 参加者は10時以降部屋に入らないといけない。 でも、人狼が活動していいのは12時から。 その2時間の間に仮眠をとるつもりで、ぐっすり寝ちゃったとか」
マホトの言葉にエイジの苛立ちが爆発した。
そんなの、信じられない。 ありえない。
「間抜け過ぎる! 命が懸かってんだぞ!?」
大声で叫ぶエイジをマホトが制する。
「うるせぇよ……! あのさぁ、何度も言うけど俺に怒んなよ」
喉元にナイフを突きつけてマホトが言うと、エイジは小さく舌打ちをした。
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時