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カチカチ、と時を刻む針は、現在午後8時の約10分前くらいを指している。 投票場には既に全員揃っていた。
果たして、今日は誰が吊られるのだろう。 私は誰に投票しようか。 そんなことを考えていたとき、はじめくんが口を開いた。
「考えたんだけど。 俺、やっぱそいつが怪しいと思う」
「は……?」
そう言って指差した相手はンダホくん。 彼が血相を変える。
「何で、そう思うの?」
陸くんがはじめくんに尋ねる。
「明らかに挙動不審じゃん。 やたらとゲームを否定してるし。 最初は真っ先に逃げようとしてたし」
「先に状況を確認しようとしただけだよ!」
「そんなのどうとでも言えるでしょ。 ……他に“こいつが怪しい”って奴がいるなら、そいつでもいいけど」
はじめくんは言いながら皆を見回した。
「もしいないなら、今夜はこいつに投票でいいよね」
「そんな勝手に……」
心做しか、ンダホくんの声は弱々しくなっている。 彼は反論しかけたものの、はじめくんが身を乗り出して声を被せてしまう。
「くだらないと思ってんでしょ? 本気にしてないんでしょ? ……なら、いいじゃん」
「くだらないとは思ってるけど投票はされたくない!!」
ンダホくんは顔を真っ赤に染めて震えている。 はじめくんは、ふっと彼から目を逸らした。
「知るかって……。 とにかく俺は、こいつの行動や発言を不自然だと思った。 だから俺はこいつに投票する。 他の皆は好きにすればいいよ」
好きにすれば、って言ったって、この状況じゃンダホくんに票が集まるのは明白だ。
皆、彼を可哀想だと思っている。 でも、誰も積極的に発言しない。 彼が最多票にならなかった場合、自分が選ばれるかもしれないからだ。
私も同じだった。 ンダホくんを助けてあげたい。 でも────じゃあ誰なら処刑されてもいいのかと問われると、答えられない。
陸くんも辛そうな、もどかしそうな表情をしている。 一方的にンダホくんが吊られる事態はさけたい、でも何をどうすればいいのか分からない……そんな苦悩がひしひしと伝わってくる。
「や……でも、本当に死んだりしないよね?」
理沙さんが頬を引きつらせ、誰にともなく問う。
「やってみないと何とも言えない」
「そりゃそうだけど」
シルクくんと理沙さんの短い会話が終わり、皆の緊張感がまた膨らみ始めていた。
「そろそろ、時間だよ……」
リクヲくんが時計を見上げて言う。 8時まではあと少し。 秒針が神経質そうに震えながら移動していく。
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時