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「はぁ……本当、最悪。 2回目あるとか聞いてねーし」
私と二人になった途端、素の自分を顕にして話すエイジ。 皆の前では猫を被って大人しくしていた。
彼はクローゼットを漁りながら「また着替え用意されるし……」と、文句を垂れる。 基本的に彼はいつも不機嫌だ。 少なくとも、ゲームの中においては。
彼は、前回は常に歯を食いしばりながら投票していた。 握り締めた拳を震わせながら、人狼に殺された子の死体を見下ろしていた。
私は机のところにある椅子を引き、そこに腰を下ろす。 天井の監視カメラがじっと私たちを見下ろしている。
「言わない方がいいよね。 私たちが2回目だって」
「当たり前だろ。 怪しまれるに決まってる」
エイジは言って、私に向き直る。
「だから目合わせないようにしてたんだろ」
「うん」
私は頷き、俯いた。
エイジはゆっくり歩み寄ってくると、私の目を覗き込んでくる。
「ねえ、今回何の役職?」
鼓動が急に速くなった。 これが、村人以外のカードに当たるってことなんだ、と今さらながらに実感する。
でも、きっと大丈夫。 演技自体には慣れているし、演じることは好きだ。 私は顔を上げ、答える。
「本当に預言者だよ」
追及される前に「エイジは?」と聞き返す。
「村人」
即答だった。 言ってから彼は舌打ちする。
「……無駄だな、こんなやり取り。 人狼が人狼なんて言うはずがない」
彼の言葉に、狐もね、と心の中で返しておく。 エイジは向かい側のベッドに座った。
「2回目の参加者は必ず特別な役職になるのかな、って思ってたけど、私は預言者だし」
鎌をかけてみた。 でもエイジは乗ってこない。
「俺はただの村人。 ……ムカつくけど」
「前回もいたと思う? 2回目の参加者」
「そんなの分かるわけねーだろ。 今の俺たちと同じだよ。 いたとしても、オープンにはしてなかった」
「……だよね」
「本当ムカつく。 何が“後半戦”だよ」
エイジが苛立ちを顕にする。
────私たちは前回、ゲームが終わるまでそれが“前半戦”だとは知らなかった。 知らされなかった。
今回のこのゲームだって、私やエイジにとっては“後半戦”だけど、誰かにとっては“前半戦”なのだ。
そうやって、この殺戮ゲームはずっと連鎖し続けているのだろう。
「でも、逆に言うとこれに勝てば終わりだから」
私の言葉にエイジが前傾姿勢になる。
「本当に終わんの?」
いつもより数段、低い声だった。
「……わかんない」
私だって“後半戦”は初めてだから。 確かなことなんて一つもない。
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時