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ひんやりとした風が頬を撫で、それを合図に私は意識を取り戻す。 ゆっくりと目を開けた時、最初に“彼”が見えた。
向かい合うような形で寝転んでいる。 ふわっと柔らかそうな黒髪が目にかかっている。 瞼を閉じているけど、とても優しそうな顔に見えた。
外から差し込む陽の光が綺麗なフィルターになり、まるで白昼夢のようだった。
私は思わずそっと手を伸ばす。 すっかり見とれていた。 これが世に言う“一目惚れ”だと、心の片隅で思った。
彼しか目に入らない。
他の人たちは皆、脇役。
彼以外の人は背景の一部だった。
彼だけは特別。
やっと、運命の人を見つけた────。
─プツッ
突如、部屋の片隅に置いてあったテレビが起動した。
【ゲームの始まりです】
青い画面に白い文字でそんなふうに表示されている。
皆、少し前まで気絶して倒れていたが、徐々に目覚め始めているのが気配で分かった。
「え……」
「何、ここ」
大半はわけのわからないこの現状に混乱し、狼狽していたが、私はそうじゃない。 私にとっては、これは2回目。
これまでの数日間、私はここで命懸けの人狼ゲームを強いられてきた。 私は村人側だった。 結果として、村人側が勝利し、私は何とか生き残った。
ようやく開放されると思ったところで意識を失い、また目覚め、今に至る。 本当に最悪だ。 だが、そんな最悪のお陰で“彼”と出会えた。
「……A?」
背後から名前を呼ばれた。 私は半身起き上がり、振り返る。
「そら?」
私を呼んだのは、同じ学校、同じクラスの、しかも割と仲が良いそらだった。 彼は前回のゲームには参加していなかった。 今回、初めて連れてこられたんだろう。
周囲を見回せば、制服姿の高校生が、私やそらを含めぜんぶで12人いた。 そら以外に知り合いはいない────ことにしておく、とりあえず今は。
意識を取り戻した皆がそれぞれ立ち上がる。 私も床に手をつきながら立ち上がった。
「引くんだけど」
この状況に────という事だろうか。
一人の女子生徒が誰にともなく呟いた。 低身長だけれど美人な女の子だった。
全員の戸惑ったような視線がテレビの画面に集まる。
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時