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#09 ページ9

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「どういう、意味?」

そう尋ねた私の声は小さく掠れていた。

エイジは答えず、少しの間目を伏せてから

「……何でもない」

そう言って顔を上げた。

「ごめんごめん、冗談」

それは、何処と無く悲しげな声音だった。



*



それからの授業と休み時間は

私たちにしては珍しく、

殆ど会話を交わすことはなかった。

何となく気まずさを感じて

私は彼の目を見ることさえ出来なかった。

別に、告白された訳でもないのに。

何故か変に意識してしまって

話しかけることは叶わなかった。



─────何か、エイジ、変だった。

普段とは別人みたい。

どうしたんだろう。

何であんなこと、私に言ったんだろう。

そんなふうに、ぐるぐると渦巻く思考の片隅で

(……嘘みたい)

と、私は思った。

まさか、エイジに対して

こんなに気を遣っているなんて

─────と。



*



結局そんな気まずい空気は

私が意図的に取っ払うことをしなくても

放課後になる頃には跡形もなく消えていた。

「今日、どっか寄ってこうよ」

普段通りのエイジが言いながら

鞄を肩に、立ち上がる。

「あ、うん。 いいよ」

特に用事もないし。と、

私も机の横に掛けていた鞄を手に取り

彼に倣って立ち上がった。

……すると。

「俺、マック行きたいなー」

いつの間に現れたのか、

そらが割って入ってきてそう言った。

彼女の姿はない。



「おまえはさっさと帰れよ」

エイジが手で追い払うような仕草をする。

「えぇー、いいじゃん!
Aを独り占めすんなよー」

そらは拗ねたように唇を尖らせて言った。

「……そう言うなら、二人で行けば?」

少しずつ、機嫌が悪くなっていくエイジ。

(……変だ、やっぱり)

彼の不機嫌さを肌で感じ取って、

でも私は何も言えなかった。

「いや、二人で行くのは駄目だろ!
……変な誤解されんのも面倒だし」

「だったら帰れよ」

「何でそうなんの?
てか何をそんなに怒ってんの?」

そらの問い掛けは最もだ。

もともとエイジとそらは、

こんなに険悪じゃなかった筈なのに。

(どうしてエイジは
そらに敵意むき出しなんだろう?)

今日ずっと感じていた“違和感”。

それを、言葉にすることは出来なかった。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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