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#07 ページ7

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「あー、今日は来てんね」

朝の混雑する昇降口で

背後からエイジが声を掛けてきた。

その視線の先にはそらと

その彼女である千夏ちゃん。

彼女はマスクをしているが

元気そうな笑顔を彼に向けていた。

「残念だったね」

にやり、と笑うエイジ。

「そんなこと思ってないもん。
そらが嬉しそうで何よりだよ」



遠目に見えるそらの笑顔が

何故だか心に刺さって痛い。

それを必死に隠しながら

私はエイジにそう言い返す。

「はいはい。 よく言えましたー」

エイジは、

わしゃわしゃと私の頭を撫でて

そのまま行ってしまう。

「ちょっと、ぐしゃぐしゃになったじゃん!」

その背中に抗議すると

彼は振り向いて、べー、と舌を出した。



……そういう遠回しな優しさは

いつも、私を引っ張り上げてくれる。

実は凄く救われているんだ。



*



授業中も休み時間も

今日は何故だかいつも以上に

そらのことばかり目で追っていた。

彼が彼女と仲良く話している姿を

遠目に見るのも慣れた筈なのに。

見るたびいちいち傷つくなんて、

私はどうかしてしまったのだろうか。



……いや、きっと違う。

昨日、私がそらのことを

独り占めしたから─────。

だから欲が出てしまったのかもしれない。

(……最低だ)

結ばれることは望まないと心に決めたのは

紛れもなく私自身なのに。



「……私って、不純」

自分の醜さを嘆くように呟くと

隣でエイジが「まじかー」と反応した。

「不純なAさんは今、
何を妄想してるんでしょうね」

「妄想なんてしてませんー!」

そう返してそっぽを向く。

「……そらが、
幸せならそれでいいって思えてたのに
今になって何かもやもやする────
私って、最低。不純」

ぽつりと小さな声で呟くと

聞こえていたのか聞こえていなかったのか、

彼からの返事はなかった。

しかし視線だけは感じていた。



「“見てるだけで充分”とか、
偽善ぽくて俺はそっちのがやだけどね」

背中に投げかけられた言葉が胸に刺さった。

(偽善、だったのかな……)

私の想いは。

そんなふうに曲がってしまっていたのだろうか。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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