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放課後。
私は言われた通り、
席に座って彼女を待っていた。
皆が疎らに下校していき私一人が残る。
……と、
机に置いていたスマホが震えた。
ごめんね!
委員会長引いちゃってて…
千夏ちゃんからだった。
全然大丈夫!
待ってるから、慌てなくていいよ!
そう返信して再びスマホを机に置いたとき。
─ガラッ
教室の扉が開かれた。
反射的にそちらを見る。
入ってきたのはエイジだった。
私の姿を認めた彼が驚いたように目を見開く。
「え、何でいんの？」
「千夏ちゃんを待ってる……」
久しぶりに交わした会話はそれだった。
「エイジこそ、何で？」
「俺はそら待ってる」
歩み寄ってきた彼がスマホの画面を見せた。
まだ?
そらごめん!
屋上って言ったけど、
やっぱり教室に来て!
「どういうこと？
私は千夏ちゃんに
教室で待ってて、って言われて…」
言いながら彼と目が合って、逸らせなくて、
それで気付いた。
……あの二人の狙いに。
このまま時間だけが過ぎたら
きっと私たちは本当に元に戻れない。
気持ちを秘めて、
誰かのためにと言い訳をして、
弱い自分が傷つくことから逃げ続ける。
だからこれはきっと、二人がくれた、
元に戻れる最後のチャンス。
─────同時に、
想いを告げられる最後のチャンスでもある。
「とりあえず俺、帰る。
そらも来ないみたいだし」
何処か慌てたようなエイジの口調。
もう迷っている時間はない。
踵を返した彼のブレザーの裾を
指先で掴んで引き止めた。
「待って……！」
鼓動が跳ねる。
悲しいわけでも嬉しいわけでもないのに
泣きそうになって喉の奥が、ぎゅー、と痛い。
でも、言わなくちゃ。
一度は私が拒んだのだから、今度は、私から。
「私、エイジのことが好き」
声が震えそうだった。
躊躇の波に飲まれないように一息で言い切る。
訪れる沈黙。
心音が速まり、頬が熱を帯びる。
「……遅いんだよ、今更」
返ってきた言葉はそれだった。
声音よりも、内容に惑わされる。
突き放されたと、拒まれたと、
こわくなって掴んでいたブレザーを離す。
だけど、
ここで引いちゃ駄目だと頭の中では分かっていた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
