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「そら」
「ん？」
休み時間、私はそらの席へ向かい
バクバク鳴る心臓を抑えて声を掛けた。
ただ話し掛けているだけなのに、
もう心臓が破裂しそうだ。
「今日の放課後……」
座ったままこちらを見上げるそら。
その眼差しにたじろぐ。
「や、やっぱり何でもない！」
私は咄嗟に顔を逸らした。
頬がじわじわと熱を帯びてくる。
“伝えたいことがある”
その言葉は、
喉に引っ掛かって出てこなかった。
「待って」
踵を返した私を椅子から立ち上がったそらが
手首を掴んで引き止める。
「あのさ、話がある」
いつになく緊張したような声音。
「放課後、待ってるから」
ここで─────と。
言い終わるとほぼ同時に
私の腕は解放された。
不安と期待が入り交じって混乱する。
返事も、頷くことすら出来ないまま
私はその場に立ち尽くしていた。
*
昼時、ぼーっとしながら
購買で買ったパンを頬張っていると
「おーい、聞いてます？」
という、おどけたようなエイジの声に
ハッと意識が現実に引き戻った。
「な、何？」
ぎこちない笑顔を浮かべる私に
呆れたようにため息をついた彼は
「何かあった？」
と、真剣な表情で訊いてきた。
「あ、もしかして振られた？」
「そんなんじゃないし！」
心がもやもやと曇る。
あのそらの言い方は、
もしかして……もしかしなくても、
(こ、告白だったりする……？)
鼓動が速まる。
だけど表情は強張っていく。
「私、おかしいかも」
「うん、今気付いたの？」
エイジの毒にも何故か今日は腹が立たなかった。
“好きな人”からの告白なんて
今まで一度もされたことがない。
だけど、だからその分、
私の勘違いかもって思ってしまう。
『話がある』と言われただけ。
……ただそれだけなんだから。
でも今は、勘違いだといい─────。
何故か私はそんなふうに考えていた。
「普通に、今まで通りでいいんだって」
唐突にエイジは言う。
「真っ直ぐで、“想い”に正直なAなら大丈夫」
浮かべられた優しい笑顔とその言葉に
心臓が、どき、とした。
─────私は今、
本当に自分の“想い”に正直なんだろうか。
ふと、怖くなった。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
