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“エイジと私がお似合い”
そらはそう思っているらしい。
……要するに、私は恋愛対象外。
仕方のないことだとは思う。
だって、そらは私の気持ちを知らない。
それでいいと私が決めたんだから。
こうして楽しそうに笑う彼の顔を見れば
私が傷ついていることくらい、
何てことはないと思えてしまう。
空気が壊れてしまうのが怖くなって
慌てて笑いながら否定しようとしたけれど
上げた視線の先で、
寝ていた筈のエイジと目が合った。
彼は眉を顰めて、じっと私を見つめている。
察するに、気を利かせて寝た振りをしていたのだろう。
そういう優しさや、今みたいな気遣いに
何度救われてきたことか…。
エイジの真っ直ぐな眼差しに、
無理矢理にでも笑うことが出来なくなって
黙り込んだ私を訝しく思ったのか、
そらが「おーい?」と
顔の前で手を振ってくる。
それから私の視線を追って
その先に頬杖をつくエイジを見つけると、
「うわ!エイちゃん、いつの間に起きてたの」
と彼はまた一人、楽しげに笑った。
「……デリカシー無さ過ぎ」
エイジはそらを一瞥して言い放つ。
そらは「え?」と苦笑しながら首を傾げた。
エイジは不機嫌そうに後頭部を掻いて
「何で気付かねぇの。
Aは、お前のこと─────」
「エイジ……っ」
彼の言わんとすることを察した私は
エイジを慌てて制する。
すると彼はもどかしそうにため息をつき、
立ち上がってどこかへ行ってしまった。
「……エイちゃん?」
そらはまた、不思議そうに首を傾げる。
私は何も言えず、曖昧に笑った。
*
「ごめん、勝手なこと言って」
授業が始まってから数分後、
小さく囁くような声でエイジが言った。
「ううん。……逆にありがとう」
必死に抑え込んでいる感情を
彼だけが認めてくれたような気がして、
苦しい気持ちがほどけていくみたいだった。
各々、板書をノートに取りながら
顔を見ずに話し続ける。
「……やめちゃえば?」
「え?」
「叶わない恋とか、辛いだけじゃん」
シャーペンを動かす手が思わず止まる。
「……やめようと思って、
やめられるものじゃないでしょ」
発した声がひどく弱々しくて
自分でも驚いてしまった。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時