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#22 ページ22

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やっぱり。

内心そう思いながら「何で?」と訊く。

「いや、突然決めたわけじゃないんだよ。
ここ最近ずっと悩んでて」

そんな答えが返ってきて、驚く。

でも、そらに

そんな気配はなかったように思う。

いつも彼女と一緒にいたし

所構わず惚気話をしてきていたし。

つい昨日だって朝も放課後も

二人で登下校していた筈だ。



「……正直言うと、
Aといる時の方が楽しいんだよね」

苦笑いをしながら彼は言った。

それは勿論、自身の彼女と比較している。

「何か気になって
目で追いかけちゃったり」

それが“おかしい”という発言の理由か。

彼の話を聞く限りでは

もう既に彼女への気持ちは

冷めてしまっているような気がする。



「一時の気の迷いかもしんない。
そう思うとすげー不安になるんだけど……」

そう呟いた彼は俯いた。

「エイちゃん、Aのこと好きでしょ?」

顔も上げないまま、

そらは確認するような口調で言う。

「……だったら、何?」

「ごめん。
あれだけ二人のこと煽っといて
今更、都合良すぎるね」

そらは俺と違って素直だ。

自分に非があると思ったら

相手が誰であれ『ごめん』と謝る。

恩があるなら『ありがとう』と言える。



そんな奴だから、

Aも好きになったのかな……。



「別に謝んなくていいから。
……俺、もうあいつに振られたし」

「えっ!?」

バッと勢いよく顔を上げたそら。

「そんなに驚く?」

「めちゃめちゃびびるよ……。
完全に両想いだと思ってたのに」

その言葉に傷を抉られた気がした。

そして、思う。

Aの恋は全然

“叶わぬ恋”なんかじゃなかった。

最初から報われると決まっているような

安っぽいラブストーリーみたいな展開だ。

……と、嫉妬混じりに、イラついた。



昔からそうだ。

俺はよく『何でもできる』と言われるけど

それは陰でこっそり努力してるから。

でも、そらは違う。

いつも遊んでいるように見えて

結局、最後は全部持っていく。

俺が欲したものも全部、

自分のものにしてしまう。

それが羨ましくて、恨めしくて、

大嫌いなのに……憎めなくて大切な奴。



はぁ、とわざとらしく大きなため息をつき

鞄を持って立ち上がった。

「いいよ」

俺の言葉に、そらはこちらを向く。



「自分の気持ちを偽らずに、正直になれば」



結局、俺が身を引くしかない。

(……)

もし二人が付き合うことになったとしても

絶対に「おめでとう」は言ってやらない。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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