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#19 ページ19

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だから、俺は焦り始めていた。



もしもそらが彼女と別れたら……

Aが気持ちを抑える必要はなくなる。

それに、そらが揺らがないとは

言いきれないのだ。



あいつの“迷い”の原因は

きっとAにあるだろうから─────。



それならば、俺が逡巡している暇はない。

そんな場合じゃない。



あの日、なかったことにしたあの言葉を

今度は本物にして伝えるべきだ。

たとえ彼女が、

俺のことを見ていなくとも。

たとえ振り向くことがなかったとしても。



*



放課後、Aと一緒に帰路につく。

自分でも驚くほど心臓が煩い。

「……」

例によってAは、

あの二人が並んで歩く姿を見て沈んでいる。



「じゃあ、また明日」

家の方向が違うので

いつもの分かれ道に差し掛かったとき

Aはにこやかにそう言って手を振った。

「うん」と無愛想な返事をしてしまって

彼女が踵を返したところで

焦心やら焦思やらが

波のように押し寄せてきた。



違う。引き止めないと。

今日は“いつもの”ように別れる訳にいかない。



早く。

早くしないと──────。



二の足を踏んでいた俺の足が

遠ざかっていく彼女を追う。

「……!」

Aの腕を掴んで歩みを止めると

彼女はふわりと振り向いた。



「ど、うしたの?」

困惑した様子のA。

「突然ごめん。
でもどうしても、
今伝えないといけないことがある」

俺はそっと、腕をほどいた。

彼女はその場に留まってくれたので

小さく安堵の息を漏らす。



もう、覚悟は決めた──────。



*



「今まで本当のこと言えなかったけど……
俺、本気でAのことが好き─────」








()うと、Aは一瞬目を見張った。

直後、顰めて唇を噛み締める。

「また、冗談……?」

その言葉に どきりとした。

「違う、あのときも本当は────
本気で言った、つもりだったんだけど」

あのときは怖かったんだ。

その“二文字”が、今の関係を壊してしまうこと。

そうなればもう、元には戻れないということ。

それを、知っていたから。



だけど、踏み出さなければ。

たとえ壊れしまっても、

ならば一生 “そこ”に留まっていたくはない。



「でも私は、そらのことが─────」

俯きがちにAが口を開いた。



(……わかってるよ、そんなこと)

でも─────。



「もうこれ以上、
そんな顔してるA見てらんないんだよ」



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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