#17 ページ17
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放課後、
エイジは居残りで何か用があるそうなので
一人で帰ることに。
教室で彼と別れ昇降口に差し掛かったとき。
「……あ、」
そんな小さな声が私を引き止めた。
声の主はそら。
珍しく一人で、
下駄箱にもたれ掛かって立っていたが
私の姿を認めると歩み寄ってきた。
「どうしたの？」
まさか私を待っていたのだろうか。
休み時間のこと、怒ってるのかな。
不安な気持ちのままそう尋ねた。
「待ってたんだよー、Aのこと」
しかし予想とは裏腹に
彼の声は穏やかだった。
「ごめんね。 俺、お節介が過ぎたね」
「うん、過ぎた」
「うっ」
軽口にもあまりに素直なそらに
思わず笑ってしまう。
(こういうとこ、
エイジとは大違い─────)
ふとそんなことを思った自分に
ハッとした。
……前まではこんなことなかったのに。
そらといる時は、
それだけでもういっぱいで、幸せで。
他のことなんか目に入らないくらい、
『好き』に迷いがなかった。
それは絶対に
揺らがない筈だったのに─────。
まさか、エイジのことを考えるなんて。
焦る。
鼓動が走る。
私はそらのことが好きで。
それ以上でも以下でもない、
この想いは決して偽りなんかじゃない。
──────なのにどうして、今は。
ぐるぐると、濁流のような思考は
そらの声に遮られた。
「はー、でも良かった。
もっと怒ってるかと思った」
心底安堵したような表情。
「いや……、私がそらに怒る資格なんてないよ」
思わずそう口走る。
「え？ どういう意味？」
覗き込んでくるその目を
直視することは出来なかった。
「……」
と、だんまりを決め込む私に
そらがこれ以上
追求してくることはなかった。
「─────よし、帰ろ」
代わりにそう明るい声を発して
靴を履き替え始める。
私もそれに倣って上靴を脱いだ。
*
校門を出たところで
「あのさ」
と、遠慮がちにそらが切り出す。
「ちょっと相談っていうか……。
弱音吐いてもいい？」
「うん、私で良ければ聞くよ」
こんな弱気なそら珍しいな、なんて
そんなことを思いながら
元気のないその横顔を見つめた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
