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#16 ページ16

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そらが悪いわけじゃない。

本当に好意での行動だったのだろう。

“私の気持ちを知らない”のは

私が伝えていないから。

─────だけどもう、限界だった。



どうすれば良かったのだろう。

どうすれば、

誰も傷つかずに済んだのだろう。



*



屋上に出て、呼吸を整える。

授業開始を伝えるチャイムが

小さく聞こえた気がした。



「……」

誰も傷つかない選択なんて、

ないのかもしれない。

誰かの笑顔は誰かの涙で、

誰かの幸せは誰かの不幸。

誰かが、必ず傷つく……。

だとしたらその誰かは、

私でいい─────。



始めからそうだったのかも。

ずるずると叶わぬ想いを引きずっていなければ

そらを傷つけることもなかったのに。

彼とエイジが仲違いすることも

なかったかもしれないのに。



“涙”しか生まない想いなら

もういっそ──────。



*



バタン、と扉が閉まる音がした。

「よく言ったじゃん」

それから聞き慣れた声。

振り向くと屋上の出入口にエイジが立っていた。

彼は、座った私の隣に腰を下ろす。



「サボりだ」

「おまえもだろ」

そう言って笑うその笑顔に何処か安心する。

「……辛かったんでしょ」

エイジは真っ直ぐ前を見たまま言った。

「あいつ無神経だわ、やっぱ」

今朝と同じ台詞に

今朝と同じ言葉を返すことは

「……」

───────出来なかった。



「でもそらが悪いんじゃないよ」

「あー、はいはい。
……誰が悪いわけでもないもんね」

「……うん」

強いて言うなら私が悪い。

─────サァ、と風が吹いた。

この風が複雑な気持ちをぜんぶ

攫っていってくれたらいいのに、

なんて柄にもないことを思う。



「ごめん」

考えるより先に言葉がこぼれた。

「そらが言ってたこと、
私とエイジがお似合いだって……
迷惑だったよね?」

エイジが拗ねたような顔をする。

「全然迷惑じゃない。
てかむしろ……やっぱ何でもない」

「えっ」

今なんて、言おうとしたの?

驚きが隠せないまま

そっぽを向いてしまった彼を見つめる。

“むしろ”ってことは、迷惑の逆の言葉?

(それ、は……どういう意味なの?)

跳ねる鼓動に、少し焦った。



*






三角形が、歪んでいく──────。



.

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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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