#15 ページ15
.
そらだよ。
……なんて、言える筈ない。
「エイジじゃないよ」
かろうじて、そう言った。
「だから俺に誤魔化しても駄目だって。
もうわかってますから！今更照れんなよー」
しかし そらは相変わらずの調子だ。
「違うってば！
エイジは本当に、ただの友だち！」
言い切ってから「ね？」と
突っ伏す彼に同意を求めるが
眠っているのか返事はない。
私がそらを想っていると、
決して気付かれたくないのに
どうしても嘘はつけなかった。
そらのことを好きだという気持ちは
偽りたくないから。
それに─────
エイジのことも大切だから。
(“友だち”だもん……)
仮にAの言う事を信じるとしても、と
前置きをしたうえで
「でも、エイちゃんは違うんじゃない？」
と 不意に真剣な顔をしたそらが言った。
「え？」
冗談を言っているとはとても思えなくて
私は困惑したまま聞き返す。
「Aはそう思ってても、
エイちゃんは──────」
そらがそう続けようとしたとき。
「うるせーよ」
赤い髪が揺れる。
エイジが顔を上げないまま、鋭い声を発した。
「……起きてたんかい」
怯む様子もなく笑うそら。
……また、空気が尖っていく。
「余計なこと言ってないで
おまえは自分の彼女のことだけ見てろよ」
顔を上げたエイジは不機嫌そのもので
それが伝染してか、
そらからも少しずつ笑みが消える。
「はあー？
言われなくても俺は一途ですけど」
「だったらもう、
Aにちょっかい出すのやめろ」
「別に普通に話してるだけじゃんか。
二人のこと見てるともどかしいから協力してんの！」
ぐ、と唇を噛み締める。
「付き合ったら絶対お似合いだって」
悲しいのか、怒りなのか、
色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざって
泣いてしまいそうだった。
「……余計な、お世話だよ」
思わずこぼれた本音。
「私の気持ち知らないくせに、
勝手なことばっか言わないで……！」
霞んだ視界でそらが目を見開いたのが見えた。
頬に落ちた涙を手の甲で拭って
逃げるようにその場から離れる。
心の中は
“後悔”で侵食され始めていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 300人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
