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二人からはだいぶ離れた。
当たり前だけど、
そらも彼女も追いかけては来なかった。
私たちは近くにあった公園に駆け込み、
呼吸を整えていた。
夕暮れ時だが私たちの他に人はいない。
「……ありがとう」
言わないつもりだったのに
つい、唇の隙間からこぼれた言葉。
心の奥底で悲鳴を上げていた、
私のSOSを彼だけが拾ってくれた。
でも、手放しに喜べる─────というか
感謝出来る状況じゃない。
見透かされていたということは
矛盾をつつかれるに決まっている。
「“見てるだけで充分”って、
やっぱりそんなわけなかったじゃん」
エイジが鋭く言った。
「そんなこと─────」
「ある。
……自分のこと、聖人君子だとか勘違いしてね？」
内心「やっぱりこうなった」と思いながら
否定しかけたが、遮られる。
鉛が落ちてきたように、
心がずしりと重くなった。
冷たい声と言葉が突き刺さる。
「してないよ、勘違いなんて」
何とか強気を保って言い返すが
どうしても怖くなる。
真っ直ぐ見つめてくるその目は
何もかもを見透かしているようで。
「もういいよ、この話は！
それより今からでもどっか行く？」
私は無理矢理話題を変えて
逃げるように少し離れると
ブランコを囲む柵に座った。
だけどエイジの表情は鋭いまま。
「……」
こういうときは何も言わない方がいい。
嘘をついたって、彼にはぜんぶお見通しだ。
そう思って何気なく空を仰いだら、
「好きだよ」
突然、そんな声が耳に届いた。
「え？」
紛れもなくエイジの声だ。
驚いて視線を戻すと真剣な様子の彼が目に入る。
直ぐには信じられなかった。
「……どうせまた冗談、でしょ？」
息を吐くように笑いながら言うと
エイジは表情を崩さぬまま
ゆっくりと歩み寄ってくる。
そして私の正面に立つと、
くい、と優しく顎を掬われた。
鼓動が速くなっていく。
嘘だ……、エイジにドキドキするなんて。
告白されている状況だと俄に信じられなくて、
でも心音は大きくなるばかり。
─────ふ、とエイジが笑った。
途轍もなく切なげに。
「うん、冗談」
その言葉に、
視線を逸らせぬまま、小さく息をつく。
「なんだ……」とホッとする反面、
少しがっかりしている自分がいるのは
きっと気のせい。
(……そうだよ、
だってエイジには好きな人が─────)
「……騙されんなよ、ばーか」
彼はそんな笑みを浮かべたまま
踵を返して公園を出て行った。
取り残された私の心に、揺れる感情を残して。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
