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─Side E─
「まーた、そらのこと見てる」
「いいでしょ、別にー!」
隣の席のこいつは、
俺の幼馴染みであるそらの事が好きらしい。
それをからかうのが最近の日課。
「あいつの何処がいいのかねー」
「エイジには分かんなくていいよーだ」
べーっ、と舌を出すA。
憎たらしい仕草だけど憎めない。
「早く帰ろ」
動揺を悟られないよう、
言いながら鞄を肩にかけて立ち上がる。
「えー、何で私がエイジと……」
「いいから。
どうせ、そらは彼女と帰るんだしさ」
俺の言葉にAは一瞬俯いてから、
「そうだけど」と柄にもなく切なげに笑った。
「ほら、早く」
俺は彼女の手首を掴んで立たせると
そのまま引っ張って歩き出す。
「ちょっと待って!」と言うAだけど
ちゃんと鞄を持って、ついて来ている。
教室を出る寸前にまた、
彼女があいつに視線を向けたので
俺は少しだけ歩調を速くした。
*
学校を出た所でその手を離す。
「……エイジってたまに強引だよね」
Aが笑いながら言った。
(相手がおまえだからだよ)
言いそうになって、慌てて飲み込む。
「……ごめん」
ここは素直に謝っておいた。
「別にー。
そういうとこ、嫌いじゃないから」
他意なく言ってるんだろうが
それがまた、俺の心臓を煩くさせた。
……俺はAのことが好き。
だけど彼女は俺の幼馴染みを想っている。
俺の幼馴染みは
彼女ではない他の誰かを想っている。
想いはすれ違い、
それでも消えることなく
平行線のまま─────。
*
寒そうに自身の指先に息を吹きかけるA。
俺は巻いていたマフラーを外して
華奢なその首元に
ぐるぐる巻きにしてやった。
「わっ」
驚いているAに
「また明日」と告げて踵を返す。
「ありがと! じゃあね!」
明るい声が背後から聞こえてきたので
片手を上げて応える。
無防備になった首に
突き刺すような風が吹き付けてきた。
「……」
俺の、君の、あいつの。
それぞれの想いは
何処へ行くのだろうか。
いつか交わる日が来るのだろうか。
少なくとも俺は、
もうそろそろ“待つ”事も限界だった。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時