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#01 ページ1

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─Side E─



「まーた、そらのこと見てる」

「いいでしょ、別にー!」

隣の席のこいつは、

俺の幼馴染みであるそらの事が好きらしい。

それをからかうのが最近の日課。

「あいつの何処がいいのかねー」

「エイジには分かんなくていいよーだ」

べーっ、と舌を出すA。

憎たらしい仕草だけど憎めない。



「早く帰ろ」

動揺を悟られないよう、

言いながら鞄を肩にかけて立ち上がる。

「えー、何で私がエイジと……」

「いいから。
どうせ、そらは彼女と帰るんだしさ」

俺の言葉にAは一瞬俯いてから、

「そうだけど」と柄にもなく切なげに笑った。



「ほら、早く」

俺は彼女の手首を掴んで立たせると

そのまま引っ張って歩き出す。

「ちょっと待って!」と言うAだけど

ちゃんと鞄を持って、ついて来ている。

教室を出る寸前にまた、

彼女があいつに視線を向けたので

俺は少しだけ歩調を速くした。



*



学校を出た所でその手を離す。

「……エイジってたまに強引だよね」

Aが笑いながら言った。

(相手がおまえだからだよ)

言いそうになって、慌てて飲み込む。

「……ごめん」

ここは素直に謝っておいた。

「別にー。
そういうとこ、嫌いじゃないから」

他意なく言ってるんだろうが

それがまた、俺の心臓を煩くさせた。



……俺はAのことが好き。

だけど彼女は俺の幼馴染みを想っている。

俺の幼馴染みは

彼女ではない他の誰かを想っている。



想いはすれ違い、

それでも消えることなく

平行線のまま─────。



*



寒そうに自身の指先に息を吹きかけるA。

俺は巻いていたマフラーを外して

華奢なその首元に

ぐるぐる巻きにしてやった。

「わっ」

驚いているAに

「また明日」と告げて踵を返す。

「ありがと! じゃあね!」

明るい声が背後から聞こえてきたので

片手を上げて応える。

無防備になった首に

突き刺すような風が吹き付けてきた。



「……」

俺の、君の、あいつの。

それぞれの想いは

何処へ行くのだろうか。

いつか交わる日が来るのだろうか。



少なくとも俺は、

もうそろそろ“待つ”事も限界だった。



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#02→



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時

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