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マホトくんがエイジくんにゆらりと歩み寄る。
「最初に告白したら……
犠牲は最小限に食い止められただろ」
その言葉を受けたエイジくんは
顔を歪め、彼を見上げた。
「どっちにしても……勝っても意味ねぇだろ」
そして、そらを剥がして立ち上がる。
「俺たち、これ2回目なんだよ」
俺たち、はエイジくんとマホトくんを指す。
(2回目……？)
「……はぁ」
呆れたようにため息をつくマホトくん。
エイジくんはそんな彼を一瞥したが
言葉を止めない。
「俺とマホト、
勝ったけど犯人に解放されなかった」
エイジくんの言葉が上手く消化出来ない。
2回目？ 解放されなかった？
一体何を言っているのだろう。
「どういう意味？ 何言ってんだよ……？」
マホトくんが混乱を極めたような態度で
エイジくんに向き直った。
それからくるりと方向転換して
傍にあった椅子を蹴飛ばす。
苛立ちが隠せない様子だ。
その苛立ちは、何処から来るものだろう。
謂れのない嘘を並べ立てられ、
陥れられそうだから？
それとも、すべてを暴露されたから？
「尚更おかしいよ！
だったら何でもっと早く言わなかった？」
「言おうとしたよ！
でも、誰も信じてくんねぇだろ」
トミーくんにエイジくんが答える。
「……そら、
ずっと本当のこと言えなくてごめん」
そらは床に座り込み、肩を震わせていた。
「……」
私は無心で青酸カリを水に溶かして混ぜる。
それを手に立ち上がると
そらも同じように立ち上がって
昨日の私のように、弾き飛ばした。
なおも肩や腕を掴み行動を制御してくるそら。
気付けば私は彼の頬を平手打ちにしていた。
乾いた音が響き、
その場のすべての音が一瞬消える。
「……そらは、人狼なの？ 村人なの？」
俯いたそらが涙の隙間で「村人」と答えた。
「生き残りたいなら、殺すしかないんだよ」
諭すように言う。
ここでは、それがすべてなのだ。
そらは後ろにいたエイジくんを振り返り
それから私に向き直ると
思い切り頬を打ってきた。
「ふざけんな……っ！」
肩を突かれ、
バランスを崩した私に馬乗りになるそら。
そのまま首を絞められるかと思ったら
そらの背後からトミーくんが彼を引き剥がし
今度はそらが床に倒れ込んだ。
早く、早くしなきゃ……。
慌てて盆の方へ駆け寄り
青酸カリの瓶の蓋を開ける。
と、それを横からマホトくんが奪い取った。
先ほど私がそらにされたみたいに
エイジくんの肩を突いたマホトくん。
エイジくんは床に倒れる。
マホトくんは容赦なく瓶を振りかぶった。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
