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失敗も逃げも、もう許されない。
考えなきゃ。 ちゃんと考えなきゃ。
自分を奮い立たせて自室に向かうと
ノートを広げて鉛筆を握った。
と、コンコン、とノックが聞こえた。
(誰だろう？)
慌てて立ち上がると扉を開ける。
そこには、ノートを抱えたそらが立っていた。
彼と横並びでベッドに座る。
そらの持っていたノートには
これまでの投票の流れが書き記されていた。
「よく覚えてるね」
「へへ、でしょ」
得意気に笑うそら。
そらは緊迫した空気を
日常へと引っ張り戻してくれる。
そういう意味で、私は彼に感謝していた。
じっとノートを見つめていると
「これ、何かおかしくない……？」
と、そらが言った。
「うん？」
その意味が直ぐには分からなかった。
おかしい、と言えば確かにそうだけれど
何が引っかかっているのか分からない。
違和感……？
このノートの内容と、本来あるべき内容で
何かが違う────？
本来あるべき……。
今のところ“真実”と思われている前提と
相反する何かが────。
「ちょっと、待って」
机の上から自分のノートを手に取り
そらのノートの内容を参考にしながら
1日目の投票の流れを書き出した。
カンタ→トミー
はじめ→トミー
理沙→エイジ
トミー→エイジ
マホト→はじめ
そら→はじめ
エイジ→ポッキー
A→カンタ
ポッキー→A
改めて見ると、よく分かる。
感じた違和感の正体。その答えがここにある。
「何であのとき気付かなかったんだろう……」
後悔混じりに小さく呟く。
「何が？」
そら自身は“おかしい”とは感じているが
何がおかしいのかは掴めていないようだった。
「────人狼同士は、お互いに投票しない」
私は静かに言った。
「特に序盤では。
村人を惑わせる効果も薄いし、
たった2票入っただけで
決選投票の対象になったりする」
……そんなことを、
昨日カンタさんと話していた記憶がある。
「現に初日、はじめくん、エイジくん、
トミーくんが2票ずつで決選投票になった。
こんな事態、人狼は絶対に避けたいはずでしょ」
「……」と黙って聞いていたそらが
ふとノートに視線を落として
「あっ」と声を上げた。
私は小さく頷く。
「カンタさん……、
トミーくんに投票してる」
カンタ→トミー
これは覆すことの出来ない事実だった。
もっと早く、
昨晩の投票の時点で気づいていれば
彼が死ぬことはなかったかもしれないのに。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
