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それからそっと彼を離すと
力なく泣きながら俯いた。
「誰が生き残っても、ここから解放されても、
もう皆廃人だよ。 皆、一緒だよ……」
そんな彼女を一瞥したトミーくんが
私の方へちらりと視線を寄越し歩み寄ってくる。
「お前が1番汚ぇよ」
吐き捨てるように言われ、
冷たい眼差しが刺さる。
“汚い”……。
私は、私の正しいと思うことをしていただけだ。
人殺しを正当化するのは間違っている。
その考えは汚いのだろうか。
非難されるに値するのだろうか。
私の目の前を通り過ぎたトミーくんが
青酸カリが溶けた水が入っている、
ペットボトルを手に
カンタさんの方へ歩み寄った。
それまで大人しく座っていたカンタさんは
弾かれたように立ち上がると逃げようとする。
しかし傍にいたエイジくんやマホトくんに
直ぐ様取り押さえられ、床に倒れ込んでしまった。
トミーくんが彼に馬乗りになる。
「……っ」
私は反射的に駆け出して
彼の手にあったペットボトルを弾き飛ばした。
それは壁の方に飛んでいき、中身が床にこぼれる。
トミーくんの怒号が聞こえた気がしたが
今の私にはまともに承ける余裕なんてなかった。
じたばたと暴れるカンタさんを
今度はマホトくんが押さえつける。
その隙にトミーくんが
青酸カリ入りの瓶を取ってきて
それを直接カンタさんに振って掛けた。
一瞬の出来事だった。
「ぁあ……うわぁァあ！」
劈くほどのカンタさんの叫び声。
涙が止まらない。怖くて仕方がない。
悲しいでも悔しいでもなく、とにかく恐ろしい。
次は私かもしれないという恐怖。
得体の知れない犯人への恐怖。
逃げ道がないこの状況への恐怖。
何もかもが怖い。
何人かの泣き声が聞こえる。
きっと皆も同じ感情なんだ。
【各自、頑張って生き抜いてください】
テレビ画面が青白く光っている。
「……」
特に何をしたわけでもないのに、
ひどく身体が疲れていた。
だるくて重くて立っていられないくらいで
私は壁に背を滑らせるとそのまま床に落ちた。
呆然としたまま座り込む。疲労感は抜けない。
薄明るい部屋の中、
そらがゆらりと立ち上がるのが見えた。
彼はゆったりとした足取りでテレビの前まで歩く。
「あああああああ!!!!」
耳を劈くような絶叫が響いた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
