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諦めを口にすると、
こんなことに付き合ってくれるマホトくんには
感謝しかないなと思えた。
「ちょっと貸して」
彼が私の手から五円玉を取る。
「もうちょっと粘ってみよう」
角度を変えたりしながら煙が立たないか
二人で見守り続けたが結局出来なかった。
蝉の声がする。
夏にしては涼しい風が吹いてくる。
こんなにも広い空が、とても悲しかった。
*
時刻は間もなく8時。
生存者全員が投票場に集まっていた。
「────俺は、預言者」
エイジくんの声が響いた。
そらが勢いよく顔を上げる。
「預言者……？」
聞き慣れない言葉に、私は身を乗り出した。
「1人を選んで、
その人が人狼かそうでないか分かる人」
カンタさんが説明してくれた。
そんな役職もあったんだ。
「昨日の晩……カンタを占った」
エイジくんが淡々と続ける。
カンタさんがそんな彼をじっと見つめ
次の言葉を緊張気味に待っていた。
「人狼だった」
エイジくんの言葉に
その場の空気が張り詰めた。
「は……？」
カンタさんが困ったように笑う。
言い間違いだと信じたいというような感じ。
だけど彼からの訂正がないことを確認すると
「俺は人狼じゃない」
と、きっぱり告げた。
「……人狼だった」
「違う、俺は村人」
カンタさんが訴えかけるように皆を見る。
エイジくんはあくまで
落ち着いた調子でさらに続けた。
「俺は今日1日、
カンタのそばにいるようにした。
カンタを見ていれば
もう一人の人狼が分かるかもって思って」
確かにエイジくんはカンタさんと一緒にいた。
けれど本当にカンタさんが、人狼……？
「でも、分かんなかった」
「いい加減にしろよ！
……これで分かった。この人が人狼だ！」
カンタさんがエイジくんを指す。
「……何それ」
エイジくんは冷ややかな視線をカンタさんに注ぐ。
「そうじゃないなら
そんな嘘をつく理由がない！」
二人の様子を見比べ、
皆が視線を交わしていた。
どちらが信じるに値するのか見極めるような。
それでいて他人の反応を鋭く監視するような。
凍てつくような空気感だった。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
