1-17 ページ17
.
真隣で倒れたAを
心配そうにそらが見やるが
今はそれどころではなかった。
毒を飲まされたはじめが
弱々しくも何とか立ち上がり
転びそうになりながらも歩を進める。
生まれたての小鹿のようにふらふらと
外へと通じる扉の方へ一直線に……。
その場にいる全員が彼の動向を見守る。
はじめは一切の迷いもなく夜の闇へ飛び出した。
瞬間、虫の羽音のような
あのモーター音が響き渡る。
直後、ドサッと
何かが崩れ落ちたような音も聞こえた。
誰も何も言わなかったが
それが彼の死を意味しているということは
全員が分かっていた。
数人の疲れ切ったような息遣いと
そらの啜り泣く声だけが静寂を支配している。
彼は、殺される前に自ら命を絶った。
犯人に対する、
ささやかな抵抗だったのかもしれない、
と、マホトは密かに考え、項垂れた。
独りでにテレビが点いた。
青白い光が全員の目に映る。
【お疲れ様でした】
やはりすべて監視されているのだと悟る。
【さて役柄ですが、
人狼、村人の他に預言者がいます。
預言者は毎晩誰か1人の正体を
占うことが出来ます。
やり方はカードに書かれています。
では、各自頑張って生き抜いてください。
神は、それでもあなたを愛してくださいます】
*
投票場から洗面所に移動し、数人が手を洗った。
流水音に負けないくらいの声でエイジが口を開く。
「思ったんだけど」
皆が彼の方を振り向いた。
「人狼が村人を殺すときも、
今みたいにめちゃくちゃ暴れねぇかな」
「……暴れるな」
トミーが頷く。
「だとしたら、
人狼の名前を叫ぶことくらい、出来るんじゃない？」
「確かに」
マホトも同調する。
エイジが続けた。
「少なくとも、隣の部屋の人には
何らかの物音が聞こえると思う。
……それも人狼探しの手がかりになるかも」
「でも、人狼も殺したくて殺してるわけじゃない」
と、マホト。
「“人狼”とか“村人”とかいう名前で
誤魔化されそうになるけど要はどっちも被害者」
壁にもたれて体育座りをしていたカンタが言う。
「犯人に殺し合いさせられてるだけ……」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「YouTuber」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
