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そらが人狼だとも思えない。
エイジくんが人狼だと確信したときの反応も
私にはどうしても、
嘘をついているようには見えなかった。
「どうしよう……」
────ちゃんと考えなきゃ。
このゲームに正面から向き合って。
今まで犠牲になった人たちの命を
無駄にしないためにも。
私自身が生き残るためにも。
机に向かうとノートを開き、
力強く鉛筆を握った。
*
夜の7時50分。
10分後にここですべてが終わる。
やや緊張した面持ちでマホトくんが来た。
彼は無言のまま自分の席につく。
「最後だね」
話しかけると彼は腕を組んで答えた。
「投票って意味では確かに最後だね。
……3人に1票ずつ入らない限りは」
「そうは、しないから」
言うと、マホトくんとしっかり目が合った。
「なら、決めたんだ？
俺に入れるかあいつに入れるか」
私は小さく息を吸い込んだ。
「決めたよ」
と、そらも自分の席についた。
8時まで1分を切っている。
(……私は)
今まで逃げてきた。
あの日犯人にさらわれてから自分からは何もせず
ただただ周りに任せて
自分の弱さを周りに押し付けていた。
のうのうと人の死の上に胡座をかいてきた。
これは、その罰。
もう逃げない。
終わらせる────。
「せーの」
マホトくんがそらを指し
そらがマホトくんを指した。
私はゆっくりと腕を上げる。
指先を、真っ直ぐマホトくんへ向けた。
「何で……」
彼の目に不思議そうな色が広がる。
「信じたかった。
マホトくんには入れたくなかった」
「じゃあ、何でだよ！」
「……それだよ」
静かに答えると彼は驚いた表情のまま
私を見据えていた。
「私はマホトくんのこと信じてた。
マホトくんもそれはよく分かってたと思う。
いつも私を守ってくれてた……」
言葉を紡ぐたびに心がズキズキと軋む。
だけど泣かないように必死に笑顔を浮かべた。
「そりゃそうだよね。
私、本当に人狼にとっては
都合の良い存在だった……。
“絶対に自分に入らない票”を
最後まで確保したかった。 そうでしょ？」
────マホトくんは優しかった。
でもそれは、まやかしでしかなかった。
……悔しい。自分の愚かさが。
マホトくんは余程想定外だったのか
しばらく放心状態で固まっていた。
しかし、だんだん感情や思考が
事態に追いついてきたのか
一度大声で叫ぶと膝から床に崩れ落ちた。
「くそ……くそっ」
悔し涙をこぼすマホトくん。
彼がこんなに感情を顕にする所を初めて見た。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
