満月愛想曲 -PARADE-2 (ページ22)

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「あっ！待ってよ！」

ヒカルさんの声にも振り返ることなく森を進む。
今はもう、主様達に会うのが怖い。

捕まえたらって⋯皆が私を追ってるの？
怖い、怖い怖い怖い！
9人と1人だなんて、どうすることもできない。
ましてや全員男性。力の差なんて歴然としている。

どうしようどうしようだなんて走りながら一生懸命考えた。
足はそろそろ限界で、傷だらけの足もだんだん痛みが増してきた。

「もう無理しない方がいいですよ。」

「⋯コウタ、さん⋯！」

いつの間にか、進行方向にコウタさんが立っていた。
どこか心配そうな目で私を見ている。

「足、怪我してるんですよね？」

「⋯」

「無理しなくていいですから、僕らと行きましょう？」

「⋯い、いやです。」

「⋯」

「私、怖い⋯怖かったんです。昨日のダイキさんのあの目。薔薇の部屋のことを言った時のユウリさんとダイキさんの表情⋯

食い殺されるくらいなら朝まで走った方がマシです！」

「ん？」

「⋯？」

「食い殺される？」

コウタさんはキョトンと私を見つめると、吹き出したように笑った。

「誰から聞いたのそれ、いきなりそんな野蛮なことするわけないじゃん！」

⋯よくよく考えたら確かに誰もいってない。
獣の噂、赤い目、獲物を前にしたような表情⋯
勝手に私がそう思っていただけだったんだ。
笑い続けるコウタさんに呆然と立ち尽くす私。

⋯恥ずかしい⋯