満月愛想曲 -PARADE-2 (ページ19)

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諦めたように座り込み、未だ震える身を落ち着かせる。
雪のお城にでも来てしまったみたいに、体はブルブルと震え続けている。

こんな時、お姫様だったら⋯
白馬に乗った王子様が助けに来てくれるんだろうな。
⋯主様達も十分王子様みたいだけど、今となってはもう怖い人にしか見えない。

あぁもう、私に王子様なんて⋯

「さぁ、行きましょう。」

伸ばされた手を、
なにか吹っ切れたようにパッと払う。
そして、私は立ち上がった。

私に王子様とか、そんなのいないけど⋯
雪の女王に出てくるゲルダはいつだって前を向いて困難に立ち向かっていた。
だから、

「私も⋯立ち向かわないと！」

「えっ！？」

「はしたなくてごめんなさい！」

バンッとテーブルに足をかけると、テーブルを渡ってそのまま走って玄関の扉を開いた。

いつの間にか夕暮れ時。
日はもうすぐ身を潜めて夜を呼ぼうとしていた。

私は走った。
昨日の今日だけど、
昨日の傷が痛むけど、
それより逃げなきゃ！

「鬼ごっこ？それならもっと楽しくしなきゃね⋯！」

家からどんどん遠ざかり、ユウリさんの姿は見えないどころか追ってくる様子も無かった。
でもさっき⋯

「"君の為"のパーティ、してあげなくちゃ⋯」

急に背後に回ったユウリさんを思い出す。
動物に変身できて、瞬間移動もできる。
もうあの方は多分、人じゃないんだ。
何かわからないけど、人じゃないんだ。

だから必死で走った。
向かう先は隣街。
シーラのところに⋯。

でもそれで頭がいっぱいだった。
だから、途中であの森を通るって
もうそんなこと頭に無かった。