魔女の記録、王子の記憶3 (ページ6)

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くるくると景色が変わる不思議なショーは見入っているうちに終盤に差し掛かっていた。
観客達の心はすっかりこの世界に魅了されていた。
途端に先程までの華やかで弾むような音楽から一転、緩やかでしっとりとした音楽が流れ始めた。

『皆さんは人魚、というものをご存知ですか？』

『え⋯人魚って、あれよね？』

涼「人魚⋯？なんだ急に。」

「人魚の種族ってもうかなり昔に絶滅したんだろ？」

この世界には人間以外にも当然たくさんの種族がいる。動物や妖精、獣人なんかもいる。
だけど現在までの歴史の中で消えてしまった種族もいくつか居る。人魚はその中の1つだ。

『最後は皆さんを神秘的で穏やかな海の世界へお連れしましょう！』

ステージの中央には布の掛けられた箱が現れた。
音楽の盛り上がりと共に布が捲られた。
そこにあったのは巨大な水槽。

『さぁ皆様Be quiet, please.チルコサーカス、大トリは本物の人魚による美しい舞でございます。⋯ごゆっくりおくつろぎください。』

水槽の中には人魚がいた。
珊瑚の色を写したような鰭を水の中で柔らかに動かしながら踊っていた。

『本物ですって！』

『どうせ偽物だろう。』

『本当に綺麗⋯！』

緩やかな音楽の中で観客達は驚きを隠せないでいた。
それもそのはず。絶滅した種族、御伽噺に近いようなその存在が今私達の目の前に居るのだ。

しかし私と涼介は違うことに気を取られていた。

「おい涼介、あれ⋯⋯！」

涼「え？えっ⋯⋯⋯

────────⋯知念？」