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私達の目を盗んで侑李の入った水槽に手をかけた団長。
しかし私も涼介もそれを見逃さなかった。
逃げようとする団長をぶっ飛ばして、涼介は侑李を守る。
失敗作は光達があっという間に片付けてしまっていた。
大「あとは知念を元に戻せば!」
「侑李、本当の事を私達に教えてくれ。」
侑「⋯。」
「大丈夫。誰もあんたを咎めたりしないさ。気負うな。」
不安げな顔をして俯く侑李。
私はその顔に触れるように水槽にそっと触れた。
「侑李、あんた黒魔術を使ったね?」
私の問いに空気が凍りついた。
侑李の表情はさらに深刻になる。
私は気を動転させないように穏やかに問いかけた。
慧「え、な⋯。どういうこ」
「侑李。」
侑「⋯。」
「正確に言えば使わされた、か?あんたの状況は察しがついてる。大罪とはいえ、故意的じゃなかった。そうだろ?」
侑「⋯、⋯。」
侑李は今にも泣きそうな顔でただ静かに深く頷いた。
状況が飲み込めてない皆に私は侑李の見に起きていることを話した。
宏「A、どういうことだ?知念は自分に黒魔術を使ったのか?」
「⋯いや、侑李はあの男に黒魔術を使うように仕向けられたんだ。」
雄「仕向けられたって⋯。」
「黒魔術はこの世界で禁術の1つとされている魔法だ。人を傷つける為、貶める為に生み出された魔法などあってはいけないからな。だから使用することもそれについて学ぶことも禁じられている。」
裕「それなら絶対無理じゃん。知念、魔法は使えても黒魔術についてなんて知識も無いんだから使えるわけ⋯」
裕翔はそこまで言って口を噤んだ。
宏太と慧も同じ反応をしていた。
他はまだわかっちゃいないようだが、3人はもうなんとなくどういうことかわかったようだ。
「そう。知識が無いんだ。この世界では黒魔術についての使用及び学習を禁じられている。それって逆を言い返せば、黒魔術について知ってる人間が誰もいないってことだ。魔法有識者も含めてな。だから極端なこといえば"この魔法は空が飛べる魔法だよ"って言われて黒魔術の呪文を教えられても区別がつかないってことだ。」
この世界で黒魔術の取り扱いそれ自体が禁止されている以上知識こそ無いが、騙されて教えられても気付く人間が居ないってこと。
あの男は多分そのルールの穴をついた。
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作者名:ねむり | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Yamane/
作成日時:2022年10月16日 23時