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第20話宇宙よりも遠いイケメン中編② ページ21

「よし！まずはパーソナルレッスンだ！体育祭の各々の動きを、一年は二年と一緒に練習してくれ。長七くんは、論と一緒に頼む」
「うげぇ……」
論先輩は相変わらず奈那痔に対して当たりが強い。
「じゃあ、始め！」

「っ……」
「マッシュ！」
練習開始から3時間が経過。マッシュ先輩はよく見ると立つ足も震えている。……やはり、道は短くないようだ。

「すみません…」
「良いんだ。ゆっくりで。……そろそろ夕食にしよう。全員！僕の後ろに続いて戻るよ！！」

ーー
「あったけぇ～～！」
全員がストーブを寄ってたかっている。ちょっとずるい……
「あははごめんね。Aちゃん、料理手伝わせちゃって。……うん、もうストーブ当たってきていいよ」
「いえいえ！大丈夫ですよ！！」
危ない危ない。顔に出てたかな？ところで何で私の切った野菜は灘花先輩の二倍くらいの大きさなんだろう？
「いや、本当に当たってきていいよ」
「いえ、大丈夫です！！」
「本当に大丈夫だから」
「私も大丈夫ですよ！」
「あぁ…」

「「いっただっきまーす！！」」
今日の晩ご飯はシチューとなった。誰だよ、この岩みたいなニンジン切ったやつ。
「おいなんか岩入ってんぞ」
「馬鹿黙れ！！それはニンジンだ！！」
テレビも無い食卓は初めてで、その分会話も弾んだ。こんな事、私の家庭ではあり得なかったな…。
「…まあ良かったよ。Aちゃん、嬉しそうで」
「っ…んごほっごほっ！！……あれ、顔に出ちゃいましたかね」
でも本当に、嬉しいなぁ…

ーー
「消灯するよ！ほら、寝床について」
枕投げムードだった寝室に突如として闇が包んだ。
「えーーもう？」
「あぁ、なんだって北極は危険なんだ。充分な休息をとってくれよ」
「…はーい」

ーー
深夜2時くらいだったか。私はどうも目を覚ましてしまって眠れなかった。
「論先輩…？」
敷き布団の一番左。そこにあるはずの論先輩の姿が無かった。
「どこ行ってるんだろう…？」
ガチャ、と、合宿所のドアを開ける。

「！！……」
月に照らされた氷上で、そのミニ四駆は走っていた。汗を流して、とても美しい一つの作品のように。

「あれ…Aちゃん」
やばい、見つかった。
「……はは。見られちゃったか……」

「あの、論先輩はどうして…」
「俺、才能ないんだよ」

え…？
「才能がない。でも、あいつらについて行くにはこうやって練習するしかない」

「かっこ悪いだろ」
…そんなこと、
「そんなこと、無いです！！」
私は叫んだ。