不機嫌なダーリン。14 (ページ6)

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sideT. 24-3 ページ6

*

「……何キレてんの」

「しつこく言うからじゃんか！」

「あー、はいはい」

マジで意味が分からない。

何か嫌な事でもあったのかって思わせるくらいAは不機嫌で、それでも今ここにAがいる事は普通に嬉しかった。

サエコの誘いを断り辛かったのかもしれないし、ここにいる本当の理由は分からないけど。

でも飲み会じゃなく俺の傍にいるって事に幸せを感じて……

「……」

「……」

……不貞腐れたような顔をしたまま黙って俺を見てくるAが可愛い。

床に着いてる右腕に体重を掛け、Aに顔を近付ける。

ゆっくりと近付く俺を見てAが静かに目を閉じて、……従順すぎるその態度に半笑いを浮かべながらその唇に触れた。

本当は抱き寄せて深くと思った俺の耳に、トイレに行ったサエコが出て来る音が聞こえ、わざと音を立てて唇を離した直後、

「お腹空いてる？」

背後からサエコの声が聞こえた。

でもサエコがトイレから戻って来る音に気付いてたのは俺だけだったらしい。

Aは相当ボーッとしてたのかその音に全く気付いてなかったらしく、サエコの声に大きく体を震わせ、

「わっ！ご、ごめんなさいっ」

近くにあった珈琲カップをひっくり返した。

その一瞬、俺の視線が向かうのはAの手元で、その時は特に変わりのない事にホッとして転がって来た珈琲カップに視線を向けた。

……それなのにこのバカは、

「ごめ、ごめんなさいっ」

慌てすぎて零れた珈琲に手を伸ばす。

*