sideT. 29-9 ページ48
*
"最後"を決めた俺を煽るかのようなその言葉。
どっちにしてももう時間はなかったんだって気付かされる。
Aが俺の前からいなくなる。
今さっきまで手放す事を覚悟していたのに、実際それが現実だと分かると急に納得出来なくなる。
「……だから聞いてねーよ」
熱くなった喉から吐き出す強がった声は、自分でも吃驚するくらいに熱くて、
「聞いてるとか聞いてないとかじゃなくて、あたしはちゃんと言っておきたい派なの!」
「そうかよ」
抑え切れない衝動に体が勝手に動き出す。
ようやくこっちに振り返ったAに自然と伸びた手は、Aの腕を掴まえて、
「じゃないと"心配"に──…んっ!?」
力ずくでその唇を塞いでた。
右手でAを掴まえて、左手はAの後ろにある玄関扉に着いて、無理矢理作った逃げられない状況で唇を塞ぐ。
捻じ込んだ舌を驚きながらも受け入れるAに、やっぱ手放したくないって気持ちが生まれ、
「な……ん、……?」
唇を離したと同時にAが出した困惑の声に、
「慰めて」
卑怯で最悪な言葉を吐いた俺は再びその唇を塞いだ。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時