不機嫌なダーリン。14 (ページ47)

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sideT. 29-8 ページ47

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その言葉に俺が見ているリビングのデジタル時計を見たAは、「ヤバい！電車!!」って大声出して玄関に向かう。

そんなAの背中を見ながら、もしかしたらこれが見納めになるかもしれないって思うと湧き上がる寂しさを抑えられず、玄関先で靴を履くAに近付いた。

別れの言葉を言うか？
何も言わないまま、もう2度と会わないべきか？

いくら駆け引きをしたところでどうなるもんでもないって悟った俺に巡る思考は"最後"の事ばかりで、逆に電源を切ってたって賭けがこんな結論を思わせる結果になった事に、そうした自分を恨んだ。

もう少しこの事に……Aの気持ちが俺には向かないって事に気付かなきゃ一緒にいられる時間はあったかもしれないのに、そう悟った事で一緒にいるのが苦痛になる。

……でもそんな俺に、Aは容赦なかった。

「あっ！草川先輩！」

「ん？」

靴を履きながら振り向きもせずAが口にした言葉に、"最後"だと悟られないように極力普通の対応をする。

「今日、2時間目から？」

「うん」

そうやって俺は努力してやってるのに、

「今日は一緒にお昼食べれない」

「ん、別にいい」

「ちょっと用事があって」

「聞いてねーよ」

「佑す…サークルの人と会う約束が」

Aは俺を追い込む言葉を口にする。

途中で言い直したそれが"佑亮"だと気付かないほどバカじゃない。

会う約束がある相手が"佑亮"だって事はすぐに分かる。

……そしてAに会った"佑亮"がどうするつもりなのかも分かる。

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