sideT. 29-5 ページ44
*
「心配したのに!」
「心配?」
「サエコさんとお昼食べるって言ってたのに連絡取れないから心配したのに!!」
「あー…」
「サエコさんとなんかあったのかって心配したじゃんか!!」
「別に何もねーよ」
「それは──…もういい」
「は?」
ギャンギャン喚いてたAは突然言葉を切り、スッと俯くと黙り込み──…
そんなAをジッと見つめてた俺は、珈琲カップを持つAの手が微かに震えてる事に気付いた。
相当俺を心配してたらしいA。
……もしくはプライドの所為で相当サエコが気に入らないらしいA。
どっちの理由にしても、俺がAをそこまで追い込んでる事には変わりない。
本当なら頭でも撫でて「心配すんな」くらい言ってやればいいのかもしれない。
でも残念ながら俺にはこの駆け引きを止めて新しい手を打つ時間がなくて。
だから。
「何なんだ、お前は」
そう言いながらAに近付き、表面が波打つ珈琲カップをその手から取り上げるしか出来ず、
「もう心配してやんない」
「してくれなんて頼んでねーよ」
微かに泣きそうな声を出すAに対しても、そんな言い方しか出来ない。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時