sideT. 28-7 ページ39
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駆け引きは時に自分の首を絞める。
その翌日、一緒に昼飯食うって言ったAはサエコとカフェテリアに居て、俺を見ると逃げるようにその場を立ち去ろうとした。
サエコと一緒にいるのが辛いのか、前日八つ当たりした俺に対して怖いとでも思ってるのか、俺が来てすぐ用があるからと立ち上がり──…
逃げようとしたAを掴まえた俺にAは言った。
「……ねぇ、あたしにして欲しい事ある?あたし、草川先輩に何したらいい?」
Aは確かにそう言った。
少し泣きそうな顔してそう言って──…
「特別なにも。今までのままでいい」
…──そう答えた俺の言葉に嘘はなかった。
特別何かをして欲しいなんて思ってない。
ただ今のまま……ずっと傍にいてくれればそれだけでいい。
そう思える程に想いを寄せてるAに対して、それでも俺は駆け引きをし続ける。
……し続けなきゃならない。
残り時間が短い今、喩え自分の首を絞める結果になろうとも、行動を起こさなきゃ何も始まらない。
だから俺は携帯の電源を切った。
サエコと約束してた昼飯は、 柊生にサプライズを返したいって相談だった。
詳しくは聞いてないがプロポーズをサプライズでされたらしいサエコは、お返しに自分も何かプレゼントしたいらしい。
それに適当に答える俺の頭の中にはAに対しての次の手ばかりで、結局サエコの相談にはまともに乗ってやれなかった。
「プレゼント買う時、ついて来て欲しい」
そう言ったサエコに「分かった」と答え、俺は携帯の電源を切り家に帰った。
これは賭けだ。
俺がサエコと会う日だと知ってるAが俺に連絡してこようとするかの賭け。
電源が切れてる俺に対して、Aがどんな行動に出るのか──…
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時