sideT. 28-1 ページ33
*
そうしたのは駆け引きばかりの所為じゃなかった。
"佑亮"が会いにきたって苛立ちも含まれての事だった。
「拓弥、携帯鳴ってるぞ?」
「メール」
「見ねぇの?」
「大丈夫」
「彼女かもしんねーよ?」
「ほっとけ」
あの日以来、Aに対して冷たくしてる。
わざとの部分と無意識の部分の境目が分からなくなってきてる。
「喧嘩でもした?」
「別に」
家にいてもAの事ばっか考えてしまうって理由で龍二の誘いに乗って来た麻雀は苛立ちに反して好調で。
龍二とその友達から巻き上げる金を手にして頭に浮かぶのはやっぱAの事。
こうしてる間にも"佑亮"にあの話を聞いてるかもしれない。
こうしてる間にも"佑亮"がAに告白してるかもしれない。
抱える不安は果てしなく、落ち込む気持ちはどこまでも深い。
男だって女並に……いや、女以上にグズグズ思うからこそ、女々しいって言葉があるのかもしれない。
そんな不安と不幸のどん底にいる気持ちになる俺の周りは、逆に幸せムードが溢れてる。
特にそれが酷いのは、
「草川君!おはよう!見て!昨日プロポーズされたの!」
「サエコ、恥ずかしいから止めろって」
「はいはいおめでとう」
柊生とサエコ。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時