不機嫌なダーリン。14 (ページ23)

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見つからないから結局俺は、

「……ん」

テレビを見ながらそう返事するしかなくて、隣にいるAの気配が立ち上がった事に残念な気持ちになる。

玄関に向かうAの背中を見送る俺は、抱き締めたいって衝動を抑える。

「草川先輩、鍵閉めてね」

靴を履きながらそう言うAにはもう遠慮がちな部分は少しもなくて、

「うん」

そう言いながら腰を上げて玄関に向かう俺の中では理性と欲望が戦ってる。

「帰るなよ」
「今日も泊まってけ」
「俺の傍にいろ」

油断すると口から出そうなそんな言葉を必死に飲み込む俺に、靴を履き終わったAが振り返った。

「……あのね、草川先輩」

それはさっきみたいな遠慮がちな言い方で、

「なに」

何を言われるのかと俺の胸はドキドキし始める。

Aは俺を一瞬見上げ、スッと視線を足元に落とす。

その感じからして言い辛い事を言おうとしてるって事は理解出来て、……胸に広がる不安は半端ない。

もしかして「もう納得したから別れて欲しい」って言い出すんじゃねーのとか、「佑亮に告白する」って言い出すんじゃねーのとか、尋常じゃない程の不安な気持ちが湧き上がってくる。

そう言われた時、どう対応すればいいのか必死で考えてるのに何一つ閃かない。

そもそもこの関係はAが求めて始めた事で、Aが納得すれば終わる。

最初はそれでいいと思ってたし、ただ遊ぶつもりだった俺はその時は納得してただけに、こんな気持ちになるとは思ってもなくて……あの頃の自分に苛立つ。

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