sideT. 26-3 ページ21
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Aが家に泊まった日は絶対Aより先に起きるように心掛けてる。
それはAの方が先に起きて俺に抱き締められてるって知られないようにする為で、特に目覚ましなんか掛けてなくても自然と先に目が覚めるのはそれだけ神経を向けてるって事で……
「草川先輩、おはよう……」
その日もAは俺が起きてから1時間後に寝室から出て来た。
それでもいつもと少し雰囲気が違うのは昨夜の件を引き摺ってるからだって分かる。
だからこそ、
「パン食うか?」
リビングでテレビを見てた俺は、気にしてないって振舞って腰を上げる。
「パンいい、いらない……」
「珈琲は?」
「……飲む」
「分かった」
「……牛乳いっぱいのがいい」
「うん」
どこか遠慮がちなAの声を背中で聞きながら台所に向かい、冷蔵庫から牛乳のパックを取り出した。
元々あんま牛乳は飲まないのにAが家に来るようになってから常に冷蔵庫には牛乳があって、Aがいないと減っていかないそれを見て苦笑が漏れる。
「珈琲」
「ありがと……」
リビングに座るAに珈琲カップを差し出すと、Aはまだ遠慮がちに声を出しそれを受け取る。
そんなAを見ながら、そのカップが元カノが買って来た物だと思い出し、A用の珈琲カップでも買ってやろうと思う俺はバカかもしれない。
Aの近くに腰を下ろしてテレビを見てる俺の意識はいつも通りAに向けられ、隣で似合いもしない正座なんかして珈琲飲んでる姿に笑いそうになる。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時