sideT. 23-8 ページ3
*
ここ最近、約束もしてないのにしょっちゅう会うようになった。
大学で会わなかった日は大抵夕方Aが家に来る。
別に何するって訳でもなく、ただ一緒にいるだけ。
そして思い出したようにキスをして、……それを仕掛けるのも俺の方からじゃない場合もある。
だからAが言いたいのは「明日は会えない」って事。
それを言ってくる辺り、Aの頭の中に俺が住み始めてるのは確かで、
「ん、分かってる」
サークルの飲み会で"佑亮"に会われるのはムカつくけど、そうして俺と会うのが当たり前だと思い始めた事には嬉しさを隠せず……思わず緩みそうになった口元を隠すようにそう言って、Aに背を向け校舎の方へ歩き始めた。
「ね、ねぇ!」
そんな俺の背中に掛けられたその声に、ゆっくりと振り返るとAが少しだけ俯いてて、
「明日、酔って電話しちゃうかもだけど、その時は無視してくれていいから!」
そう言ったAに「……はいはい」と小さく返事をしながら校舎の方に向き直った。
俺に無視出来る訳がない。
いくら嫌だって思っても電話が掛かってくりゃそれに出るし、「迎えに来て」って言われりゃ迎えに行く。
それでもこの間抱いていた気持ちよりは落ち着いた気持ちでいられる。
それは多分Aとこうして関係を深めていけてるからで、Aのその思考の中に俺って存在が在り始めたから。
少しずつその頭に刻み込んでやる。
俺って存在を忘れられねぇようにしてやる。
俺じゃないとダメだってくらいにまで持ち込んで、完全に惚れさせてやる。
浮かれてた俺はそんな事を思ってて、この先に待つ未来が暗い事を予想すらしてなかった。
*
648人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時