sideT. 25-5 ページ15
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いつの間にか俺の唇はAの唇から首筋へと移動していて、その手はAの胸元にある。
分かっていながら正確には理解してはいなくて、Aの声に我に返った俺の体は小さく揺れた。
ここに来て初めて頭の中に芽生えるヤバイって感覚。
それと同時に思うのは拒否されたって事への哀しみで、結局ただの"慰め役"だった俺は、
「……悪い。調子乗った」
覆い被さっていたAから離れベッドに腰掛けた。
……情けねーなって正直思う。
こんなに必死な自分が情けないし、どんだけ必死になったところでAの気持ちが俺に向かない事が情けない。
それなりに経験してきてもこうして本気になった時には今までの経験なんて何の意味もなく、むしろその逆にそれが足枷になる。
もし俺に何の経験もなけりゃこうしてここでAに手を出す事はなかったと思う。
ビビり上がって手も出せず……キスすらしてなかったかもしれない。
けどそこそこの経験の所為でそれなりに自信があった俺がした行動は、暗に自分の首を絞めるだけの結果に終わり、
「ごめんなさい……、」
背後から聞こえてきたAの謝罪に情けなさが増幅する。
それでも反射的に振り返った俺の視線の先に、マジで申し訳なさそうな顔してるAがいて……その顔を見てまた更に情けなく思う。
どんなに頑張っても所詮は"慰め役"だと言われてるような気持ちになる。
そんなどうしようもないくらいに情けない俺に、
「キス……するのは嫌じゃない」
Aが言ったその言葉は、今後も"慰め役"を続けろって指示。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時