sideT. 25-1 ページ11
*
「草川君、二股はダメだよ?」
「してねーよ」
「Aちゃんまた遊びに来てね」
「……」
サエコの玄関先に立った頃には既に0時を過ぎていて、「飲みすぎんな」って散々忠告してやったのにAは相当酔っ払ったらしく俯いたまま何も話さない。
「んじゃ、帰る」
「うん、またね」
サエコに軽く手を上げて隣にいるAに視線を向けると、Aは俯いたままで一切顔を上げようとしない。
もうどうしようもねーなって思った俺はAの両手を自分の腕に引っ掛けて引っ張って帰る事にした。
フラフラの足取りで引っ張られながら俺の家まで来たAは、不機嫌さはなくなったらしい。
それが酔ってる所為なのか、俺に散々八つ当たりしたお蔭なのかは分からねーけど、
「気持ち悪い?」
「……眠い」
家に入ってすぐに話し掛けても、おっとりではあるが普通に返事はしてくる。
でもその態度が落ち込んでるように見えるのは"佑亮"の二股疑惑がある所為で、靴を脱いですぐに寝室へと歩いていくAの背中に哀愁が漂ってるようにも思えた。
パタンと閉まった寝室のドアを見ながら俺の口から出てくるのはA以上の哀愁の溜息で、どうにもならないこの状況に疲れすら感じる。
それでもAを放っておく事なんて出来ない俺は、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出すと寝室に向かった。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時