sideT. 23-6 ページ1
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恋愛経験の少ないAでも一応男心が分かってるらしい。
キスだけで済ませられる男が早々いない事を知ってるらしい。
キスするってのはその後の展開を期待するって事で、それ以上は無理だと分かってる俺に対して"自虐的"だと思ったらしい。
でも実際はそんな程度の"自虐"じゃない。
Aは分かってないだけで、俺はAが思ってる以上に自分で自分の首を絞めてる。
どんなに頑張っても手に入れられそうにない女。
どんなに頑張っても"佑亮"が好きなA。
そんな相手とキスするなんて"自虐"以外の何者でもなく、
「かもな」
そう言った俺の顔に自然と自嘲的な笑いが零れた。
でもこれが自虐だったとしても、Aとキスした事を後悔する事はないと思う。
今は自虐だとしてももしかしたらこの先には俺にも希望があるかもしれない。
要はどうやってAの気持ちを俺に向けさせるかなだけで、その方法さえ間違わなけりゃ未来は明るい。
そんな今は泥沼の俺に、"自虐的"だと言いながらAは"もっと"を求めてくる。
「……まだ満足してない」
そう言ったAの気持ちはもう考えたくはなかった。
それが"佑亮"を忘れる為だなんて考えたくはなかった。
ただ俺を求めてるだけだと思いたい。
俺に少しずつ気持ちが向けられてると思いたい。
キスする度にその気持ちが俺に向くなら、いくらでもやってやる。
「いっぱいして」
そう言ったAの両腕が首に巻き付き、その声に導かれるように唇を重ねながらその体を引き寄せる。
俺の腕に収まるAが……俺にキスを求めるAが、愛おしくて仕方ない。
さっき思っていた衝動をそのまま行為に移した俺は、この腕でしっかりとAを抱き締め暫くの間離さなかった。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時