不機嫌なダーリン。5 (ページ10)

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店員が来ると、受け取った割には一切見ないメニュー表をテーブルの端に置いて、草川先輩は珈琲を頼んだ。

「えっと、まずコレね」

草川先輩が頼んだ珈琲がテーブルに運ばれて来ると、あたしは鞄の中からB5サイズの数枚の紙を取り出し草川先輩に差し出した。

反射的にそれを受け取った草川先輩は、それに目を通して眉を顰める。

「何だよ、コレ」

「旅行のしおり」

あたしの言葉に草川先輩は右眉だけを上げて「はぁ？」って顔をすると、手に持ってる紙とあたしを交互に見てから、紙をテーブルに置いた。

「あたし、来週サークルで旅行行くの」

「だからなに」

「で、それが旅行のしおりのコピー」

「……だから？」

「それに泊まる旅館とか行く場所とか書いてある」

「……」

「それ、草川先輩にあげる」

「いらねーよ」

食い気味でそう言った草川先輩は、溜息を吐きながら珈琲に手を伸ばす。

来た時よりも不機嫌さが増したのがすぐに分かるその態度に、

「"彼氏"だから"彼女"が行くとこ把握してなきゃダメでしょ？」

嫌味のようにそう言ってやると、草川先輩が睨むようにこっちを見た。

「俺、この間言ったよなぁ？『懐きすぎ』だって」

草川先輩は正に正論を述べてますって感じで、偉そうに威圧的にそう口を開いて、

「それ、誰と比べて言ってる？」

あたしがそう言い返すと、吃驚したみたいに目を見開く。

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