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乱暴に引きずられて旅館の入り口にある門を過ぎると、フッと草川先輩が手を離し息苦しさが消えた。
それと同時に痛い視線も感じなくなって、ようやく草川先輩から離れたあたしは、目の前にあるソレに目を奪われた。
「……これ……」
「あ?」
「草川先輩の……車?」
目の前にあるソレは、白いワゴン型の軽自動車。
小回りが利きそうだとは分かるけど、草川先輩に似合ってない。
草川先輩ならもっとゴツい車が似合いそう。
ってか背が高いのに軽自動車って似合わない。
そう思った矢先、
「違う」
草川先輩はそう答えて後部座席のドアを開け、放り投げるようにあたしの荷物を中に入れた。
それに対して一瞬文句言おうかと思ったけど、迎えに来てもらった身分だから何も言えず、黙って運転席のドアを開ける草川先輩から離れて、助手席に回った。
「じゃあコレ誰の?」
なんて質問してるあたしの声は、もうすっかり泣き声じゃなくなってた。
帰れる事にご機嫌になってて、凄く安心してた。
そんなあたしに、
「──…彼女」
草川先輩のそんな言葉が聞こえ、それと同時に開いた助手席のドアの向こうに、何ともメルヘンチックな世界が広がった。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年5月30日 23時