001 バンデルフォン地方 ページ32
「アイツもすっかり仲間だな」
楽しげな様子でシルビアと話すAに、カミュとイレブンは笑みをこぼした。
「まさか、あの
「俺は、イレブンと知り合いって事の方が驚きだよ」
「僕も最初は気づかなかったよ」
カミュとベロニカの言葉に、イレブンがつい数日前の記憶を頭に浮かべてふける。
ダーハルーネの町で、ホメロスが率いるデルカダール王国の兵士達と遭遇してしまったこと。
イレブンを助けようとしたカミュをAが庇い、代わりに人質として捕まってしまったこと。
Aを助けた後、シルビアの船でホメロス達から逃れられたこと。
ホメロスの刺客である”
「そういえば、あのシロエって人。裏でこそこそ手を回してくれてたらしいな」
「僕たちがラハディオさんの屋敷に訪ねて行ったときも、僕たちが追われている身だって事も知ってたみたいだしね」
「だったらもっと早く誤解を解いてほしかったけどな」
「まあ、でも、ラハディオさんに呼びかけてくれたのは違う理由じゃないかな?」
「は?なんだよ、それ」
カミュが訝しげに首を傾げる。
イレブンは肩をすくめて、Aの方へちらりと目をやる。
「僕がしってるシロエさんは、不器用な人だからね」
クスクス笑うイレブンに、カミュもベロニカも互いに首を傾げた。
「でも、ホントによかったの?私たちの旅に同行してもらって」
「うん、だって本人の希望だし」
彼女はあの騒動の後、イレブン達の旅に同行したいと申し出たのだ。
もちろん最初はシロエも反対していたが、Aの強い希望に押されてしまったのだった。
なんで?と不思議そうに頭の上にクエスチョンマークを浮かべたイレブンに、ベロニカが小さな溜息を吐いた。
「あのねぇ、私たちは一応追われている身なのよ。あの大魔導士様といたほうが、よっぽど安全なのに。別に彼女を信じてないわけじゃないけど…」
「んー、でも、Aのそーゆうとこは昔から変わらないけどなぁ。」
答えになってない!とベロニカが更にごちる。
「みなさーん、もうすぐバンデルフォン地方に到着しますよー!」
笑顔でこちらに手を振るAに、イレブンも片手を短く挙げて返した。
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作者名:マナ | 作成日時:2020年1月12日 20時