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「はっはっは!ここで仲間に逃げられるとはな。イレブンよ、貴様の仲間など所詮はその程度の繋がりだったということ。随分手間を取らされたが、今宵のショーもここでおしまいだ。ここでおとなしく私に捕まるか、海に落ちてサメのエサになるか…。今ここで選ぶがいい!」
彼は勝利を確信したように嘲る。
兵士たちとの距離もあと数歩に迫った時だった。
「ホ、ホメロスさま!あれをご覧くださいっ!!」
一人の兵士の声に、ホメロスだけでなく、その場にいた者が声の指す方へと視線を向けた。
月の光に照らされた大きな影が、海の先に見える。
「みんな、おっまたせ〜!!シルビア号のお迎えよん❤」
真っ赤な帆が風に揺れ、姿を現した豪華な装飾品があしらわれた船の先端から、大きく手を振っているシルビアの姿があった。
「アリスちゃん!あれがアタシの仲間たちよ!あの波止場スレスレに走ってちょうだいっ!」
「がってんっ!!」
紫のマスクをつけたガタイのいい、大柄な男性が舵をひく。
「さあ、みんな、飛び乗って!」
「行こう!」
グイッとイレブンに腕を引っ張られて、返事をするまもなく走り出す。
彼の合図と共に、勢いよく地面を蹴り上げた。
「じゃーね、ホメロスちゃん♪今宵のショーはなかなか楽しかったわ。アデュー❤」
「どうしましょう、ホメロスさま…。このままではヤツらに逃げられてしまいます…。」
「フッ…薄汚いドブネズミ共が。このホメロスから逃げられると思うなよ…。」
先ほどまでいた波止場は、夜の闇に包まれてぼんやりとしたシルエットでしか確認できない。
一定の間隔で、灯台から漏れる光の線で照らされていた。
「…もう大丈夫みたいだな。一時はどうなることかと思ったが、おっさんのおかけで助かったぜ。」
カミュが遠くなっていくダーハルーネの港を見つめ、一息ついた。
「あ、あの!」
その声に、みんなの視線が集中する。
「見ず知らずの私を、先ほどは助けて頂いて、ありがとうございました。」
皆の視線に少したじろぎながらも、Aは深々と頭を下げる。
カミュとベロニカがキョトンとした顔になるや、肩をすくめて笑った。
「なにいってんだよ。助けてもらったのはこっちのほうだぜ?」
「そうよ。さっきはセーニャを庇ってくれありがとう」
「で、でも、私なんかが、立派な船に乗せてもらって…」
チラリとシルビアの方に視線を向けると、クスッと笑って手を横に振った。
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作者名:マナ | 作成日時:2020年1月12日 20時