検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:7,339 hit

010 ページ28

ベロニカは信じられないといった表情で、ポカンと開いた口を手で覆った。
彼女だけでなく、ホメロスを除いた彼らは、同様にその光景に呆気にとられていた。

「炎が…消えた…」

メラメラと散る熱に、Aは自身の杖を高く掲げた。すると、彼女の杖の先にある青い花のような装飾品が開花し、迫りくる炎が吸い寄せられるように集まっていく。大輪の花の下には、根に絡められたガラス玉のような球が、海中に差し込む光のように神秘的に輝いていた。
そして、炎がすべて吸い寄せられると、役目を終えたように蕾へと花びらを収縮させた。

「あの?大丈夫でしたか?」

セーニャへくるりと振り返ったAは、ニッコリと微笑んだ。

「あ、はい。あ、ありがとうございました!」

驚いた表情で口をポカンと開いていたセーニャは、不思議そうな顔でこちらを覗く彼女に、慌てて頭をペコリと下げた。

「助けて頂いたのは、私のほうですから」

そう言って彼女は、優しく目を細めた。

(ふん、悪運の強いやつだ)

ホメロスは、チッと小さく舌を打つ。

「よそ見してると危ないぜ!」

「クッ…ハァっ!!」

カミュに隙をつかれ、懐に短刀が伸ばされるも、それを軽く弾き返す。
しかし、カミュに気を取られ、背後から迫るイレブンの剣に気付くのが一瞬遅れてしまう。

「ダメっ!!」

静止の声と腹に伝わる衝撃はほぼ同時だった。

「グッ……この私に、ヒザをつかせるとは…」

ドサッと重く地面に膝をつくホメロスが、ギラリと剣を構えたイレブンを睨みつける。

「ホメロスさま…」

Aは、膝をついたホメロスに駆け寄ろうと足を踏み出すも、それは鋭く射貫くような瞳によって静止された。同時に、ガシャガシャという音が近づいてくると、デルカダールの兵士たちが集まってきているのが見える。

「私を倒しても何も変わらぬ。貴様らはここで捕らわれる運命なのだ!」

じりじりと追いつめられるように追いつめられ、後ろを見ればそこには冷たく波打つ海しかない。

「やめてください!お願いします!」

Aは、イレブンたちを庇うように両手を広げて前に出る。
彼女がやめてと訴えかけるのは、兵士たちの後ろにいるホメロスだった。
まっすぐに彼へと向ける言葉も、まったく届かない。
ぎゅっと唇を嚙みしめ、駄目なのかと思ったときだった。

「みんな、安心して!もう大丈夫よ!」

シルビアが明るい声色でそう云うや、走り出すと地面を蹴飛ばして、海の下へと飛び降りた。

011→←009



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.9/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
8人がお気に入り
設定タグ:ドラクエ11 , ログホライズン , ホメロス   
作品ジャンル:ファンタジー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:マナ | 作成日時:2020年1月12日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。