検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:7,331 hit

008 ページ26

自分の名前を呼ばれた瞬間、眩い光が飛び込んでくる。

「いい加減目を覚ませっ!!」

すうっと重たい瞼を持ち上げると、見慣れた顔に段々と覚醒していく。

「…ほ…めろす…さま…?」

「お前、この状況でよくそんな顔していられるな…」

呆れたように冷ややかな瞳でAを見下ろすホメロスに言われ、首を傾げたが、腕が動かない事に違和感を感じて、自身を見た。
腕から伝わる圧迫感と足から地面の冷たさを感じ、ようやく自身が捕われていることに気づいた。

(そっか、わたしあの時…)

イレブンたちを逃すために、ホメロスの魔法からカミュを突き飛ばしたのだった。

「何故、あの時庇った。いや、今回だけではない。イシの村の時もだ。お前は、何故邪魔ばかりする」

「…何故かと聞かれると、明確な理由はありません。というより、わからないと言うべきでしょうか」

「なに…?」

ホメロスの納得いかないといった表情に、Aは困った表情で俯いた。

「…な…」

「…え?」

「ふざけるなっ!!」

首筋から伝わる氷のような切っ先が喉に向けられる。刺さってはいないが少しでも動けば、白く柔らかい肌は裂け、赤い液体が溢れてくるだろう。

「お前はいつもそうだ。そうやって勝手に他人に土足で入ってくる。自分の命が危険になろうともだ!今もこうして剣を向けているというのに、何故そんな顔ができる!私がお前を切れないとでも高を括っているのか!!」

「……。では、仕方ないですね。私の言動が気に入らなかったのであれば、謝罪致します。ですが、私はふざける気も嘘も申し上げません。」

彼女は静かに息をすると、目の前のにいる彼の名前を呼んだ。

「私だって怖いのです。剣を握っているのは、ホメロスさまです。私の首を跳ねてしまうなら、それもあなたさまの判断です。だから…」

そっと瞼を静かに閉じた。
ジットリとした汗が全身を冷やす。
緊張と恐怖で震えているのがわかる。

「…ッ」

喉元の皮に切っ先が触れる。
銀色の鉄の塊から、鮮やかな紅が浮き上がった。

「クソッ!!」

カランッと地面に剣が転がった。

「……ホ、ホメロスさま。あの、血で汚れてしまいます!」

そっと触れられた喉元から、鉄の液体がホメロスの手に溢れる。深い傷ではないが、少量の生暖かい液体が首を汚した。

「うるさいっ!傷が開くから黙っていろ!これ限りだっ!次はその首が繋がっていることはないと思え!!」

「…はい」

治療を施すホメロスに、小さく微笑んだ。

009→←007



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.9/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
8人がお気に入り
設定タグ:ドラクエ11 , ログホライズン , ホメロス   
作品ジャンル:ファンタジー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:マナ | 作成日時:2020年1月12日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。