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「それに、悪魔の子のイレブンちゃんが邪悪の神ちゃんを倒すってどういうこと?」
「…イレブンさまは、デルカダール王国から災いを呼ぶ悪魔の子という汚名を着せられ、追われながら旅をしているのです。シルビアさまにはいずれ、きちんとお話するつもりだったのですが…。巻き込んでしまって、すみません。」
「や〜ねぇ、そんなこと気にしてないわ。はじめっからイレブンちゃんは、悪い子じゃないってわかっていたもの」
「シルビアさん…」
赤いトンガリ帽子を被ったベロニカは、シルビアの寛大な言葉を聞き、安心したように微笑んだ。
「なるほど、やはりそうでしたか…」
暗闇から聞こえた声に、全員が身構える。
「あぁ、驚かしてすみません。」
杖の先端から紅い光を揺らし、白いマントがぼうっと見えた。
「まったく気配がわからなかった。何者だ…?」
「僕はシロエ。しがない魔法使いですよ」
「シ、シロエってあの!?」
丸い眼鏡から覗く切れ長の三白眼が、赤い少女を見据えた。
「聖地ラムダの賢者セニカの生まれ変わり、双賢の姉妹にご存知頂けているとは」
「あなた様のことを知らない魔法使いはいません。ですが、シロエ様のような方が何故ここに…」
「僕もワケあってね。彼らに用があるんだ。ところで、君は勇者の生まれ変わり、イレブンだね。君はこの状況をどうみる?」
シロエに問いかけられ、イレブンは一瞬驚いた表情を見せる。しかし、彼は少し考えた後、シロエの瞳を真っ直ぐ見返した。
「このまま僕らだけ逃げて、放っておくなんてできません。彼女を助けに行きます!」
「おしっ!よく言ったぜ、イレブン。おれも一緒に行くぞ!」
「イレブンちゃんならそう言うと思ったわ。今度はこっちから動くわよ!」
「でも、町は兵士でいっぱいです。どう進みましょう…?」
皆、各々の意見を出し合っていると、シロエが口を開いた。
「僕に、考えがあります」
そう言って薄っら微笑んだシロエは、眼鏡を軽く押し上げた。
◆
カチッ、カチッ、カチッ___
規則的な音が響く。
フワフワとした感覚に、これは夢だと理解した。
「…また、この夢」
薄暗い黒と青の空間は、グラグラと揺れていて、自分の存在するらも曖昧になってしまうのではないかと錯覚させられる。
無数に宙を舞う時計と青白く漂う実体のない文字のような光は、手を伸ばしても触れることが出来なかった。
全ての時計が同時刻を指した時、静寂と共に身体が光に飲み込まれる。
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作者名:マナ | 作成日時:2020年1月12日 20時