検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:7,343 hit

004 ページ22

(あれは…《さえずりのみつ》?いや、それを魔物用に調合したものか)

《さえずりのみつ》とは、喉を痛めた人が飲むと美しい声を取り戻せるというものだ。
先程よりも元気になったマドハンドを見て、シロエは少し驚いた表情をしていた。
警戒して一口も食べようとしていなかったダックスビルも、それを見て少しずつ食べ始めたようだ。

「きみはホントに…」

言葉を続けようとしたが、シロエはやめた。
はぁ、とため息を吐き、彼女の背中を見つめた。

(…人にも魔物にも優しすぎる)








「なんだかいつもと雰囲気が違いますね。お祭りのような…」

「あぁ、今日はたぶん”海の男コンテスト”の日じゃないかな?」

ダーハルーネの町で例年開催される”海の男らしさ”を競うコンテストであり、開催時は町を挙げてのお祭り状態となり、商業町らしく屋台が立ち並んで賑わいを見せる。
全国的にも知名度が高く、町の名物の一つとなっている。

「それってなにを基準にして決めるんでしょうか?」

首を傾げて考えるA。

「んー、”荒波のようなたくましさ”だったり、”潮風のような爽やかさ”、”海のようなおおらかさ”の三つを備えた人が対象らしいけど、飛び入り参加もオーケーのようだから…」

「では、シロエさんも参加できますね!!」

まるで迷いのない表情でAがシロエを見る。

「それはやめて…」

「シロエさんなら絶対優勝できます!!」

どこからそんな自信が湧いてくるんだと言いたい。
根っからのインドア派のシロエにとって、目立つようなことは苦手だった。
彼女が評価してくれるのはとても嬉しいし、男性冥利に尽きるが、何故だか落ちこんでしまう。

「僕はこれからある人と会わなきゃいけないんだ。Aがそう言ってくれるのは嬉しいけど。」

「そういえば、用があったんですよね」

無理やり話をそらしたが、どうやらAはそちらの話に食いついたようで安心した。

「うん。Aはこの町を見てまわるといいよ。せっかく来たんだし。欲しいものがあったらあとで買おう」

「え、でも…」

「大丈夫。そんなには掛からないから。」

「…はい。わかりました!では、私はお祭りを見てまわりますね」

笑顔でシロエの背中を見送った彼女は、その場でぽつりと佇んだ。
シロエがいなくなり、一人でいると先程まで意識しなかった町の声も耳に入ってくる。
彼女はゆっくりと石畳を歩き始めた。

005→←003



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.9/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
8人がお気に入り
設定タグ:ドラクエ11 , ログホライズン , ホメロス   
作品ジャンル:ファンタジー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:マナ | 作成日時:2020年1月12日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。