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「行ってしまいました…」
冷たい潮風が静かに吹き抜ける。
先程まで眩しく輝きをはなっていた神殿も、何事もなかったかのように静寂についていた。
しかし、少女はハッとする。
その時には自身の足は、走り出していた。
「…いたっ！A！」
大空を羽ばたく鷲獅子が頂の向こうから駆けてくる。
シロエは、グリフォンの手綱を軽く引いてやる。
それに応えるように一鳴きしたグリフォンは、ゆっくりと降下をはじめた。
「A！！心配したじゃないかっ！！まったくキミはいつも…」
グリフォンから飛び降りたシロエは、グチグチとお小言のように説教を始めた。
しかしAは、シロエではなく彼がもつ自身の鞄を見て、食いつくようにその手を掴んだ。
「シロエさん！お説教は後でたくさん聞きます！だから、ごめんなさいっ！」
「えっ、あ、A…」
シロエは、ようやく彼女がしようとしていることが理解できた。
彼女の前には、苦しそうに息をする馬が2頭いる。
深々と刺さった矢が痛々しく、血がドクドクと滲み出していた。
(これは…)
シロエは、周囲の様子からなんとなくだが理解した。
離れた所では、デルカダールの兵と将軍グレイグがこちらに向かってきていた。
彼女はそんなことなど気づいていないのか、1頭の馬を処置している。
「シロエ殿、何故ここに？」
「いやぁ、弟子の好奇心にも困りますね。なんにでも興味をもってしまって」
へらへらと笑うシロエに、グレイグは表情を変えずにAを見やると、兵を引き連れて去って行った。グレイグ達がいなくなると、シロエは先程の表情と変わって、真剣な顔つきで口を開いた。
「A、その子たちを今助けても、脚が折れていればどちらにせよ助からないんだよ？その意味をわかっているのかい？」
馬の一般的な体重は、400〜500�堊宛紊箸い錣譴討い襦�
通常でも1本の脚で100�圓六戮┐討い襪海箸砲覆蝓�骨折などの怪我を負ってしまうと残りの脚で全体重を支えなくてはならない。
つまり今助かったとしても自力で立てなければ、命に関わる問題なのだ。
それ以前にAの治療が遅れても、衰弱死か痛みによるショック死の場合もある。
シロエは、必死に治療を施しているAをじっと見つめた。
「わかっています…でも」
彼女は決して手を止めることなく、言葉を続けた。
「シロエさんなら、それを理由に諦めたりしないから」
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作者名：マナ | 作成日時：2020年1月12日 20時
